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2020.05.26

PDCAサイクルとOODAループの違いと共通点

PDCAサイクルとOODAループの違いと共通点

経営やマネジメントの場面では、よく「PDCAサイクル(PDCA)を回すことが大切だ」と聞くことがあると思います。もしかしたら、あなたも社員に「きちんと、PDCAサイクルを回しなさい」と指示をしているかもしれません。

しかし、一方で「PDCAサイクルは時代遅れだ」「これからは、OODAループ(ウーダ・ループ)の時代だ」ということを耳にする人もいるのではないでしょうか。

人は新しいものを好む傾向にあります。特に世間で噂されているものであれば、その新しいものがより一層よいものに見えてきます。

しかし、経営は、一つの判断が大きな機会損失になります。是非、流行に流されずに、物事の本質を見極めた上で判断する習慣を身に付けて下さい。

今回は、このPDCAサイクルとOODAループについて取り上げます。このPDCAサイクルとOODAループの説明した上で、これら2つに対する考え方を提示したいと思います。

PDCAサイクルとは

PDCAサイクルは、PDCAとも表記され、多くの方が一度は聞いたことがある言葉だと思います。それほど、PDCAサイクルは日本に浸透しています。

このPDCAサイクルは、生産技術における品質管理などの継続的な改善活動を行う際に使われるフレームワークの一つです。1950年代にアメリカの品質管理研究の第一人者であった統計学者ウィリアム・エドワーズ・デミングとウォルター・シューハートによって提唱された考え方です。

そして、PDCAサイクルのポイントは、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の 4段階を繰り返すことです。PDCAは、それぞれの英語の頭文字を取っています。なお、最後のActは名詞のActionと表記される場面が多いです。

現在、このPDCAサイクルは、管理手法の基礎として利用されるだけでなく、ビジネスやスポーツなど分野を問わずさまざまな場面で活用されています。

なお、提唱者のデミングは、晩年まで「CheckはHold Backという停止を意味することから好ましくない」と主張していました。そして、没年には「Checkは、研究を行うStudyに置き換えPDSAサイクルとすべきである」とも主張していました。

【PDCAサイクルの概要】

  • Plan(計画):従来の実績や将来の予測などをもとにして業務計画を作成する。
  • Do(実行):計画に沿って業務を行う。
  • Check(評価):業務の実施が計画に沿っているかどうかを評価する。
  • Act(改善):実施が計画に沿っていない部分を調べて改善をする。

OODAループとは

OODAループとは、意思決定と行動に関する思考法です。Observe(観察)→Orient(情勢への適応)→Decide(意思決定)→Act(行動)のループによって、健全な意思決定を実現するというものです。

このOODAループは、アメリカ空軍のジョン・ボイド大佐が、朝鮮戦争における戦闘機の空中戦での洞察を元に提唱し、元々は航空戦に臨むパイロットの意思決定を対象としていました。

しかし、指揮官のあるべき意思決定プロセスを分かりやすく理論化したものとして、アメリカ全軍やNATO(北太平洋条約機構)加盟国をはじめとする西側各国の軍隊だけでなく、中国やロシアを含む世界中の軍隊でも採用されるようになりました。

そして、今ではシリコンバレーをはじめとするビジネス界でも採用され、アメリカのビジネススクールでも取り上げられるようになっています。

なお、ジョン・ボイド大佐は、航空戦において、どんなに不利な状況からであっても、40秒あれば形勢を逆転できたということから「40秒ボイド」の異名を持っていました。そんな彼の強さの秘訣を一言でいうと、「行動に移す速さ」です。

ジョン・ボイド大佐は、軍を引退した後に人間の意思決定に関する研究に没頭し、その研究の末に作り上げたのがこのOODAループです。

すなわち、OODAループは、そのループの速さも必要な要素とされています。

【OODAループの概要】

  • Observe(観察):周囲の状況を観察する。
  • Orient(方向付け):Observeで分析した結果を踏まえ、行動する方向性を定める。
  • Decide(意思決定):Orientで定めた方向性から行動を定め、意思決定を行う。
  • Act(実行):Decideまでに決めた行動を実行する。

PDCAサイクルとOODAループの違いは?

よく、PDCAサイクルとOODAループとを比較した説明では、次のように説明されることがあります。

「近年の予測の難しい環境では、臨機応変さやスピードが求められる。しかし、多くの企業では、過去の前例などからPDCAサイクルが染み付いており、スタートアップやニッチ企業との競争では明らかに不利である。
一方、OODAループは、状況の不確実性や不透明性を前提に、機敏な意思決定と行動によって優位性や高いパフォーマンスを実現しうる思考法である。」

ひと言で表現すると「PDCAサイクルは行動までに時間がかかる。OODAループは行動までの時間が速い。だから、OODAループの方が優れている。」

このような説明は、完全に間違っているとまでとは言いませんが、抑えて置くべきポイントが抑えられていません。

何故なら、PDCAサイクルは上述したように、もともとは生産管理や品質管理の手法です。そのため「決まっている工程で、どのようにすれば低いコストでより多くの効果を発揮できるか」を解決するのに適した手段です。

つまり、PDCAサイクルは、プロセスを重視しており、数値的な裏付けや指標をもとに目の前の課題や中長期的な視点から企業を成功に導くフレームワークです。

一方で、OODAループは状況に応じて意思決定を行うための思考法です。そのためPDCAサイクルのような決まった業務のフロー改善ではなく、明確な工程のない物事に対して意思決定を行うための手法と言えます。

言い換えれば、OODAループは現場適合性を重視しています。迅速な周囲の観察や迅速な判断、実行が常に求められる市場の動向や顧客ニーズに適合した思考法なのです。

すなわち、PDCAサイクルとOODAループは、効果を発揮するために使われる場面・状況が異なります。一概に、PDCAサイクルは古くて使えない。OODAループは新しくて時代に合った思考法だ。とは言えないのです。

PDCAサイクルとOODAループの共通点

もう一つ、PDCAサイクルとOODAループの違いとして、スタート地点が異なることが指摘され、以下のように説明されることが多いです。

つまり、PDCAサイクルは、計画を立てて実行し、それを評価・分析した上で、はじめて次の改善に移る。

一方、OODAループは、まず現状を観察することから開始し、分析から実行までを速やかに実施する。

結局、サイクル・ループを回すことが大事

しかしながら、どちらにも共通することは、各要素を回し続けることが大切だということです。つまり、プロセスとして回すことができれば、スタート地点が異なったとしても、それは大きな問題ではないのではないでしょうか。

具体的には、両者のプロセスを直線に表すと、各要素が何度も出てきます。

PDCAサイクルのDo(実行)と、OODAループのAct(実行)を起点として考えると、「PDCAサイクルのD→C→A→P」と「OODAループのA→O→O→D」は、実行→検証→修正→仮説の流れでほぼ同じ意味になるのではないでしょうか。

つまり、両者とも仮説・実行・検証・修正のプロセスを回しているに過ぎません。

ここで言いたいことは、成果を出すための活動として「如何にプロセスを回し続けることができるか」。そして、「そのサイクル・ループを如何に速く回せるか」が重要であるということです。

「何のために」の目標を定めておくことが最も重要

そして何より、PDCAサイクルもOODAループも、あくまでも手段・方法に過ぎません。

あなたも、「PDCAサイクルを上手く回せない」「上手く回せないPDCAサイクルは意味がない」ということを耳にしたことがあるのではないでしょうか。

しかし、このようなコメントの背景には、手段である「PDCAサイクルを回す」ことが目的化している現場は多々あります。

極端な話、目標が達成されれば、PDCAサイクルが回せているか回せていないかは関係ありません。

あくまでも、「PDCAサイクル・OODAループで達成したい目標は何なのか?」を見失わずにプロセスを回してください。

OODAループは、新しい概念ではない。

このOODAループは、新星のごとく現れた新しい概念だと考えてしまいます。しかし、実はそうではない。というのが、私の見立てです。

では、いつ・どこで考えられていたのか?その答えは仏教にあります。

仏教の教え:苦集滅道

仏教の教えに、四諦(したい)というものがあります。四諦とは、仏教が説く4種の基本的な真理で、以下の苦諦、集諦、滅諦、道諦の4つを指します。その4つを合わせて「苦集滅道(くしゅうめつどう)」と呼びます。

苦諦(くたい):生死の苦。つまり、現状。
集諦(じったい):苦の原因である煩悩の集まり。つまり、原因。
滅諦(めったい):苦集の無くなった悟りの境地。つまり、あるべき姿。
道諦(どうたい):悟りに至るまでの修行。つまり、やるべきこと。

OODAループ、ならびにPDCAサイクルの各要素と比較すると以下のように対応していると考えられるのではないでしょうか。

つまり、苦諦とは現状を受け入れること。集諦とは苦の原因を知ること。滅諦とは苦集のない理想のあるべき姿のこと。そして、道諦とは、滅諦までに行うこと。

まとめ

今回、従来から馴染みのあるPDCAサイクルと、近年新たに提唱されているOODAループとを比較して説明し、両者が使われる場面が異なることなどを示してきました。

しかし、実は、『OODA LOOP』(東洋経済新報社)の著者チェット・リチャードは、「PDCAの『Check』のプロセス、すなわち結果を観察し、必要ならば状況を変えるという行動にOODAは相当する」と述べています。

つまり、PDCAサイクルは会社・組織に属する活動領域を扱っており、OODAループは個人的な思考領域を扱っていると言えます。

時代と共に、新しい手段や方法が提唱されますが、それらはあくまでもやり方に過ぎません。大切なのは、そのやり方をどのように扱うかという考え方です。

さらに言うなら、正しい考え方と正しいやり方が合わさった時に初めて効果が得られます。やり方に流されずに、しっかりとした考え方を持って頂ければと思います。

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