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2020.09.02

1 on 1の基本的なやり方と考え方

1 on 1の基本的なやり方と考え方

1 on 1とは、1 on 1ミーティングとも呼ばれます。行うことは上司と部下の1対1の定期的な「対話」です。

ここで、上司と部下という表現を用いましたが、会社の大きさが、経営者のあなたの目が全社員に行き届く規模であるなら、是非、経営者と社員との立場で1 on 1を貴社で取り入れて頂きたいと思います。従来の「面談」とは異なる「対話」を重視することで、会社の活性化につながるはずです。

会社の成長には、社員の成長が必要不可欠です。どのような社員がいて、会社にどのようなことを望んでいるのかを知る必要があります。そのためにも、1 on 1を通じて、社員一人ひとりのことをよく知って頂ければと思います。

今回は、この1 on 1の基本的なやり方について説明しますが、やり方にこだわり過ぎずに、あくまでも、1 on 1は「社員のための時間」だということを忘れないでください。

1 on 1の基本的なやり方

1 on 1の基本ルール

1 on 1を実施するにあたって基本となるルールは以下の3つです。

  1. 少なくとも月に1回(可能なら、週1回から隔週1回の頻度で)
  2. 1回につき15分から30分
  3. 事前に話すことは考えておく

1. 少なくとも月に1回(可能なら、週1回から隔週1回の頻度)

多くの会社では社員との面談を年度ごとや半期ごとにしており、1年に1回から2回ほどしか行わないことがほとんどです。しかしそれでは社員への十分な聞き取りができているとは言えません。

本来、1 on 1は週1回から隔週1回程度の頻度で行うことが理想です。経営者のあなたが1 on 1を全社員に実施する場合、週1回での実施は社員数によっては困難だと思います。

しかし、この頻度は1 on 1で最も大切なポイントです。1回15分という短い時間でもいいので、できるだけ回数を増やしていくことを心掛けて下さい。

2. 1回につき15分から30分

定期的に行うことが重要であるため、続けやすいように1回の時間は短めとします。

ただし、社員が深刻な悩みを抱えている場合や、なかなか解決への道筋が見えない場合は、この限りではありません。社員の状況に応じて、臨機応変に時間を増やすなどの対応を行います。

3. 事前に話すことは考えておく

1 on 1導入期に起こり易いのが、いざ「何について話しますか?」と社員に聞いても、社員が「特にありません」となることです。

大きな原因の一つは、あなたと社員の間に信頼関係が構築できておらず、あなたに相談できないという場合があります。また、他の原因として、社員自身が自分の仕事について振り返りができていなかったり、客観的に見えていなかったりすることもあります。

1 on 1を実施するために、専用シートなどを使って、話したいことを2つ3つ考えておくことで、スムーズな運営が可能となります。

話をする内容の具体的な切り口としては、以下のような項目が考えられます。

  • よく出来たと思っていること
  • 困っていること
  • 気になっていること
  • 目標の進捗
  • プライベートの悩み
  • 最近新たに始めたこと、など

1 on 1を実施する際の注意点

1 on 1を実施する際はいくつかの注意点があります。その中でも特に気をつけたいのは以下の3つです。

  1. まずは社員の話を聴く
  2. 仕事の業績向上につながる会話をする
  3. キャンセルではなく必ずリスケジュールする

1. まずは社員の話を聴く

1 on 1は社員のための場であることを忘れてはなりません。「社員の話す時間が8割以上になる」ことを意識して下さい。

また内容が、他の社員に対する相談であったとしても「あなたならどう思うか・あなたの意見は?」というように、質問を返して、さらに深い情報を引き出すなど、社員に話をさせるようにします。

社員にあらかじめ今回の課題を提出してもらう方法もあります。たたき台として共有された文書があると社員も話がしやすくなり、あなたも落ち着いて話を聞けるというメリットがあります。

2. 仕事の業績向上につながる会話をする

慣れないうちは、対話が難しいかもしれません。沈黙が続くなどした場合は、話しやすい雰囲気を作るために、雑談は必要です。

しかし1 on 1の目的は業務時間を使って社員からアウトプットを促し、最終的には仕事の業績向上につなげることです。貴重な機会があることを忘れずに雑談だけで終わらないように注意します。

3. キャンセルではなく必ずリスケジュールする

忙しい仕事の合間を縫うため、時には予定通り1 on 1を実施できないこともあるかと思います。その際はキャンセルではなく必ずリスケジュール(再日程調整)します。

キャンセルではなくリスケジュールすることで、会社側が1 on 1を大切にしている、社員を大事にしている。という会社側の意思表示にもつながり、社員との信頼関係を構築にも寄与します。

1 on 1において話し合う目的は大きく2つ

目的を説明する前に1 on 1を始める際の気を付けるべき点は、以下の3点です。

  • 雑談でもよいが、雑談ばかりはN.G.
  • 業務の細かい進捗の話はN.G.(社員がどうしてもというなら別だが、毎回はN.G.)
  • 話すテーマのゴールを決める必要はない。しかし、客観的な視点で今全体のどこ(Where)の何(What)を話しているのか?という意識は必要(ゴールへ誘導するコンパスは必要ないが地図は必要)

雑談ばかりのゆるい雰囲気ではなく、少し雑談を含む柔らかい雰囲気で社員との対話を行います。その際、具体的になり過ぎる話に終始すると、短期的な視野で問い詰めるような雰囲気にもなりかねません。

普段あまり話さない抽象度の高い話を中心に、主な視点は中長期に向けます。そして、あなたが話を誘導するのではなく、その場の雰囲気や社員の状態に共感しながら、社員の立場に寄り添って話すことを心掛けます。

目的別にさらに2つに分けることができます。

  1. 信頼関係づくり
  2. 社員の成長支援

あなたと社員の関係の根本にあるのは、人間関係です。その関係を築く基礎となるのは信頼関係です。この土台なくして強固な関係性は築けず、伝えたいことも伝わりません。まずは信頼関係づくりが不可欠です。よって、この信頼関係づくりは、1 on 1の時に毎回心がける必要があります。

そして、信頼関係をつくりながら、あなたが行うべきは社員の成長を支援することです。この社員の成長が会社に高いパフォーマンスをもたらし、会社の成果を最大化させます。この2つは完全に分けられるものではなく、相互に影響し合っています。

信頼関係づくり

プライベート相互理解

社員にプライベートなことを話してもらうためには、雰囲気が重要です。人は環境によって気分が左右されるものです。そこで特に意識してほしいのが、社員の話に、あなたの「納得」を求めてはいけない、ということです。あなたが「納得」するための時間は、あなたのための時間です。つまり、「納得」ではなく「共感」のスタンスで臨むことが必要です。

また、「共感」は相手に味方と認識させますが、「説得」は敵と認識させてしまいます。更に、「共感」は安心と勇気を与えてくれます。

心身の健康チェック

心身の健康チェックとは、心身の状態や業務量、業務時間などを確認することです。今、社員が「どのような状態で」仕事に取り組んでいるのかを知っておくことも、経営者としての役割です。なぜなら、心身の健康は仕事の結果に関わってくるからです。

「最近寝つきがよくない」「早めに起きてしまう」「疲れやすい、ダルイ」これらは、メンタル不調の最初のサインです。このような回答があった場合には、少し深堀りして原因を聞いて下さい。

「残業が多い」「変えるのが早い」残業や業務量の過多など、社員の立場ではどうしようもない状況についても確認して、場合によっては、タスクの洗い出しや効率化の方法、更には優先順位をつけることを社員と一緒に行います。

存在承認

あなたが行うのは、社員の話を「聴ききること」です。「話を聴いてもらっている」ということが何よりも、「自分は大切にされている」と存在承認を実感してもらうことが大切です。

また、仕事での成果についても触れて下さい。「自分の仕事を見てくれている」ということも存在承認に繋がります。

この存在承認は、最終的に会社の成果に繋がりますので、是非、大切な要素であることを意識して下さい。

社員の成長支援

目標設定/評価

目標設定も評価も、その本質は社員の育成にあります。また評価で最も大切なことは「正しい評価」ではなく「評価される側の納得感」です。いくら「ルールに則った」評価をしても社員が納得しなければ意味がありません。

つまり、会社として「社員の納得のいく評価」を行って、社員の育成につなげていくことにあります。そのために、日頃から短い期間での1 on 1により、物理的な接触頻度を増やして、目標へのフィードバックや承認を行う必要があります。

社員が心の中で思っていることを聴いて、社員特有の状況や想いを理解しない限り、社員は「自分をきちんと見てもらっている」という感覚は持てません。ルール通りの「正しい評価」を行っても、社員にとって納得できない評価となってしまう恐れがあります。

また、目標設定も同様に、1 on 1を通じて、正しい目標設定から納得感のある目標設定に変えていく必要があります。

能力開発/キャリア支援

業務を通して、社員の気づきを促すことで、社員個人の能力開発とキャリア支援を行うことができます。

能力開発とはすでにある能力を自覚させることです。社員は、業務を何らかの行動をとることで終わらせますが、そのときに社員は自分のどのような能力が発揮されたかについてあまり気にしていません。

しかし、ある行動がとれるのは社員が持つ能力が発揮された結果です。そして、社員本人はこの発揮した「能力」には無自覚です。その場合、たまたま発された能力として、次の機会に発揮できないかもしれません。

そこで、質問によって社員自身に気づかせるのです。そして自分の中からその能力が発掘することができれば、その能力をまた異なる場面でも活用することができます。社員自身が自覚的になることで、自分の能力を扱えるようになります。

社員が「将来やりたいこと」を考えるキャリア支援にも、目標から逆算する考え方の「トップダウン型」と現状の積み重ねによりキャリアを切り開いていく「ボトムアップ型」があります。どちらのやり方にも共通しているのは、現在を「迷わず、充実して過ごせる」ことにあります。これを踏まえた上で、将来像について社員に問うポイントは以下となります。

  • 会社内での将来像
  • ビジネスパーソンとしての将来像
  • その他(人間として、家庭の中で、地域の中で)の将来像
  • 業務の改善

一般的には、緊急度が高く、かつ重要度の高い業務の場合は、社員から報告や相談することができます。一方で、期限が決まっていない、重要だけど緊急ではない業務については、なかなか社員から声が上がらない傾向にあります。

しかし、本当に重要なのは、この重要だけど緊急ではない業務です。よって、1 on 1では数字や具体的案件の進捗確認などの目先の成果に関することは扱わないことを前提として、業務改善と組織改善について対話します。

これら、将来起こりうるリスクを先回りして考えたり、業務をもっと効率的なものにしていくアイデアを出したりすることです。そして社員の視野を広げていくことは、中長期的に結果を出していくために極めて重要なことです。

戦略・方針の伝達

経営者としてのあなたの大きな役割は、社員全員を一つの目標に向かって一致団結して行動を促すことです。

そのためには、経営者のあなたから「社員への報連相」が大切です。あなたは、社員が知ることのない重要な情報を得ているかと思います。「社員に開示する必要はない」とご自身の中で留めておくのではなく、社員が知りえない情報を精査して、社員に公開していきます。つまり、「社員への報連相」ができる経営者は社員を育成することが上手です。特に、社員に早い成長を期待するならば情報を頻繁に出していくべきです。

さいごに

今回、時代に合った組織開発方法の1 on 1のやり方について説明してきました。経営者のあなたが、全社員と「対話」の時間を取ることは、初めは大変だと思います。足元の業務が回らなくなる可能性が出てきて、1 on 1どころではないかもしれません。

しかし、会社には、経営者にしかできない仕事がいくつかあります。その一つが、「人事・組織」です。分業化が進んでいる大企業とは異なり、少数精鋭の中小企業では、あらゆる業務をこなすために、社員の能力を最大限に引き出す必要があります。その能力を引き出すことができるのは、経営者しかいません。

アメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)を焼く20年率いて、「20世紀最高の経営者」と称されたジャック・ウェルチは「会長として仕事の75%近くは人事だった」とコメントを残しています。

ピーター・ドラッカーも、「エグゼクティブは、人材マネジメントと人事関連の意思決定に最も多くの時間を費やしており、それがあるべき姿である。これほど影響が長引く判断、あるいは元の状態に戻すのが難しい判断は他にない」と記している。

それほど、会社にとっての人材育成・組織開発は、経営の重要課題だと言えます。是非、あなたの会社でも、1 on 1を取入れて、会社発展のきっかけにして頂ければと思います。

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