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2023.02.04

評価制度での見落としがちな視点

評価制度での見落としがちな視点

人事制度は、経営資源の「ヒト」に関わり、経営に直結する制度です。すなわち、人事制度とは経営の仕組みです。そして、「仕組み」とはルール運用が揃って初めて機能します。

つまり、人事制度という経営の仕組みは、ルール運用の両方が大事、というわけです。

ところが、「制度を作ったら、もう大丈夫」と、ルールを作ることに焦点を合わせている経営者が多くいます。そこには、運用という視点が抜け落ちています。

そして、人事制度が経営の仕組みとして上手く機能するためのポイントは、ルール作りではなく、運用にあります。

今回のブログでは、人事制度では運用が大事、ということを抑えた上で、今一度、人事制度の「仕組み」について考えて見たいと思います。

人事制度の機能

人事制度にも色々な機能が含まれていますが、大きな機能として「人材育成」があります。

もし、あなたの会社で既に人事制度を導入してたとしたら、同じような事例がないか?
そして、どのような運用がよりよい人事制度になるのか?
そのような視点で本ブログをお読みいただければ幸いです。

評価基準の明確化ではなく…

人事制度を「人材育成」の仕組みとして機能させるために、重要な役割を担っているのが評価制度です。ところが、この評価制度を上手く運用できずに多くの企業が頭を抱えています。

では、なぜ、評価制度を上手く運用できないのか?

一番の理由が「評価基準の共有化が図られていない」ということ。

よく、評価制度に関して、「評価基準があいまい」「評価基準がわからない」など社員からの不満の声が上がります。

そして、この不満を解消するために、「評価基準を明確化しなければいけない」と経営者は頭を抱え、そして「誰もが分かるような評価の数値化」という思考が発生します。

ところが、「営業職は業務を数値化しやすいが、事務職の業務は数値化しづらい」と新たな悩みで、八方ふさがりに陥っている、ということはよくある話です。

ここでの問題点は、「評価基準が不明確である」ことではありません。実は、「評価基準の共有化が図れていない」ことが問題なのです。評価の数値化は、共有化を図る手段として、単純明快というだけに過ぎません。

近年、「評価基準の明確化」が必要、と言われることが多いですが、厳密には「評価基準の共有化」が必要、というわけです。

あいまいな基準を解消する、たったひとつの方法

では、どのようにして、「評価基準の共有化」を図ればよいのか?

それは単純に「話し合う」ことが最も効果的な手段です。

評価基準とは、会社の価値観であり、会社が求める当たり前の行動基準です。

会社として、

・どのような能力を求めるのか
・どのような行動がすばらしいのか
・どのような実績を良しとするのか

ところが、多くの会社では、「評価者の主観による評価基準」で評価します。つまり、評価者同士の主観を比較し、「君の評価は甘い」「その評価は厳しい」と指摘し合うのです。

そして、そのような状態で評価された結果、評価された側の部下たちから「一体どんな基準で評価されているかわからない」と声が挙がってくるのは当然です。

ここには「答え」はありません。

大事なのは、「評価者の主観による評価基準」ではなく、「会社の価値基準」です。

繰り返しますが、個々の評価者の「主観」では評価基準となる「価値観」が異なるのは当然です。だからこそ、評価者が客観的になって「会社の評価基準は、どこだろう?」と評価者同士で議論する必要があるのです。

この議論は、とても面倒な作業です。そして、面倒であるため、多くの企業が実施することができていません。

その結果、いつまで経っても「評価基準があいまい」「評価基準がわからない」という社員の不満は解消されません。

評価者同士で、会社の「評価基準の共有化」を図っていますか?

もしも、これまで行っていないのであれば、まずは、「評価基準の共有化」を図るために、話し合ってみてください。

現状に合わせるのではく、目標に合わせる!

「評価基準があいまい」という不満を解消するためには、評価者の評価基準にならないように、「会社の価値基準」を共有化する必要があります。それを実現するためには、単純に「話し合う」しかありません。

しかし、この話し合いの場面でも、更なる問題が発生します。

どのような問題が発生するのか?

それは、経営者ご自身も「どんな評価基準にしたいのか」が明確ではない、ということ。

・頑張っている社員を評価したい
・真面目に取組む社員を評価したい

などのような考えは、よく聞く経営者の考えです。

しかし、これらの内容は、極めてあいまいな表現であり「どの程度を求めているのか?」とレベル感を具体的に聞かれると、明確に答えることができません。

では、初めから、明確な基準を定めなければいけないのか?と問われると、そうでもありません。

つまり、初めから明確な基準を定めることができれば、それに越したことはありません。

でも、初めから明確な基準を定めることができるのは稀であり、評価を繰り返し行っていくことで、「もっとこうあって欲しいよね」「これぐらいは期待したいよね」と徐々に明確化していく。

言い換えれば、話し合いを通じて経営者ご自身が、「経営者・会社の評価基準」を明確化していくのです。

そして、その際、気を付けて頂きたい点があります。

それが「現状に囚われない」こと。

つまり、社員は、目の前の業務を引き合いに出して「やっている・やっていない」「できている・できていない」と自己評価します。

しかし、経営者は、目の前の業務ではなく、会社で実現したい目標達成に必要な業務内容や能力・役割に対して、基準を設けなければいけません。

「私たちは、指示された業務をこなしています。なぜ、もっと評価してくれないのですか?」という社員は多くいます。

このような社員の声は大事です。でも、経営者と社員とは、見ている視点・世界が違います。社員の目線に合わせるのではなく、「会社の経営目標」に目線を合わせる必要があります。

これは、評価制度における大事な視点です。

あなたは、社員の目線に合わせて「なんか違うんだよな」と思ったりしていませんか?それは、目線が社員に引っ張られて「現状に囚われている」可能性があります。

評価基準を共有化する際、経営者として実現したい目標を見失わずにいることが大事です。是非、この視点を忘れずにいてください。

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