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2020.09.02

時代に合った組織開発法の1 on 1とは

時代に合った組織開発法の1 on 1とは

1 on 1とは、1 on 1ミーティングとも呼ばれます。この1 on 1で行うことは上司と部下との1対1の定期的な「対話」です。この「対話」の対極にあるのが「面談」です。

従来の「面談」は、上司が部下の人事評価などを行う際に、仕事の達成度合いや来期の目標設定について、上司が部下に確認したい話をする、いわば“上司のための時間”でした。

一方、この1 on 1の「対話」とは、“部下のための時間”です。この1 on 1は、週に1回~月に1回といった定期的なペースで30分程度の「対話」を行い、部下が仕事を通じて得た体験や課題、悩みを上司と共有する、部下個人を中心としたミーティングです。

このブログを読み終わった時に、「1 on 1は面白そうだ。是非、自社でも1 on 1を取り入れてみよう」と思ってもらえればと思います。

特に、会社の大きさが、経営者のあなたの目が全社員に行き届く規模であるならば、是非、経営者と社員との立場で、従来の「面談」とは異なる「対話」を重視した1 on 1を貴社で取り入れて頂きたいと思います。きっと、この1 on 1が会社の活性化につながるはずです。

1 on 1とは

この1 on 1は、最先端の企業が集まるシリコンバレーでは古くから行われています。その中でも、一番初めに1 on 1を組織開発の手法として取り入れたのはインテルでした。インテルが1 on 1を取り入れた背景には、人種や宗教、価値観が異なる国だからこそ、1対1の対話の重要性を重んじていることが挙げられます。

また近年は、グーグル社でも上司と部下が30分~1時間の1 on 1を行っています。グーグル社の元CEOエリック・シュミットは以下のように言います。

“事業は常に業務プロセスを上回るスピードで進化しなければならない。だからカオスこそが理想の状態だ。そのカオスの中で必要な業務を成し遂げる唯一の手段は、人間関係だ。社員と知り合い、関係を深めるのに時間をかけよう。”

シリコンバレーでは、優秀なエンジニア一人で会社の命運が変わることもあるため、優秀な人材を確保するために各社の経営陣は頭を悩ましています。今いる会社に得るものがなくなれば、優秀な人材はすぐに他社に流れていきます。そのため、シリコンバレーでは1 on 1の時間を「Quality Time(部下にとって高質で貴重な時間)」としている企業もあります。

日本においても、シリコンバレーの企業同様に、優秀な人材に自社で活躍してもらうために、より個別に人を見ていく必要が出てきたと言えます。そして、この1 on 1を日本でいち早く取り入れた企業にヤフーが挙げられます。ヤフーでは、早くから全社に取り入れ大きな改革を起こしたことからも注目が集まっており、日本でもここ数年で1 on 1を導入する企業が増えています。

この1 on 1を通じて、経営者のあなたは、時にカウンセラーのように社員の話を聞き、社員の状況や問題、関心事を把握します。1 on 1の結果として社員は、気持ちがすっきりしたり、納得感を得たり、次のチャレンジへ行動していこうとすることが最も重要なことです。

1 on 1が注目される背景

近年、技術革新により経営環境や市場動向はめまぐるしく変化するようになりました。そのため、年度初めに立てた目標が、期末になる頃には全く違ったものになっているという状況も珍しくありません。

つまり、変化の激しい現代では、期初に目標を立て1年後に振り返りをするというのでは、現代の経営の実態に合わなくなってきています。

そんな時代に合わせて、短い期間でより多く経営者と社員が対話する機会を持ち、PDCA を繰り返していくことが必要になっています。

また、社会的背景が急速に変わっているのに「経営者と社員のコミュニケーションの取り方が変わっていないこと」にも問題があります。

つまり、社員の価値観が多様化し、働き方も多様化している現代だからこそ、社会的背景に合わせたコミュニケーションに変化させていく必要があるはずです。

そして、従来の組織で行われているコミュニケーションとは、結果を出すだけの「情報交換」を指しているのではないでしょうか。

組織の課題とは、例えば、人が育たない、優秀な人が辞めてしまう。チームに活気がない、といった「人」に関することで、問題となっている事象は多岐に渡ります。しかし、これらの問題を突き詰めていくと、実は根本的な原因はたった一つ。それは「個人に焦点を当てた対話の不足」です。

結果を出すために必要なコミュニケーションは密に取っている、と経営者側が思っていても、それは業務に焦点をあてたいわゆる「仕事の話」をしているだけに留まっているのではないでしょうか。

個人に焦点を当てた「対話」が継続的な結果をもたらします。

個人に焦点を当てた対話の目的とは「社員との信頼関係づくり」や「社員の不安の解消」、さらには「社員の心身状態の確認」など、社員自身に関することです。これらの一連の働きかけが、「心理的安全性」に繋がるのです。

1 on 1の目的

1 on 1の大きな目的は以下の2つです。

社員の成長

1 on 1では、従来の目標管理や業務の進捗管理が目的ではありません。効果的な社員の成長を促すことを目的としています。

1 on 1により、社員は自分の失敗体験や成功体験を振り返る習慣がつきます。その過程で取組むべき課題を明確にすることが可能となります。その結果、経験学習のサイクルが身に付きます。自分に繰り返し起こるパターンを認識することで、精神的な面での課題も見つかる可能性もあります。

また、経験の振り返りから社員自身が自分の適性や可能性に気づくこともあり、こういった気づきが社員のキャリア支援のきっかけとなります。

目標の達成

社員の成長とセットとなる目的が目標の達成です。1 on 1の機会を設けることによって社員は困っていることへの解決方法やヒントや経営者や上司からの協力を得ることができます。

社員の行動について、経営者側から客観的に見て目標を得遠回りしていたり非効率的だったりした場合は、軌道修正を促せます。1 on 1により、高い頻度でフィードバックを得られれば目標達成への精度も上がります。

1 on 1のメリット

経営者のメリット「社員の情報を引き出すチャンス引き出せるチャンス」

経営者が1 on 1で、日々変化している現場の状況を直接聞き取れば、現場への理解を深めることができます。

また、1 on 1の場面で普段の業務中にはわからない社員の性格や健康状態、家庭の事情を知ることもあり、結果、社員の仕事のパフォーマンスに対する理解度を向上させることができます。

社員のメリット「タイムリーな相談」

1 on 1は週に1回から月に1回定期的に経営者の時間を得られます。このため、社員はその都度、自分がその時に困っていることについて相談したり、自分がうまくやれているのか評価を受けたりすることができます。

従来、会議は頻繁に行われているものの、1対1の面談は少ないと半年~1年に1回、多くても四半期に1回程度しか行われていない企業ばかりでした。

それが1 on 1として半強制的に面談の時間を設けることで、社員は自分の仕事について(場合によってそれ以外のプライベートな事なども)ある程度気軽に相談できるようになります。

両者のメリット「信頼関係の構築」

定期的に 1 on 1ミーティングを行うことで経営者と社員は自然と距離感が縮まるようになります。

定期的な1 on 1によって「心理的安全性」が確保されれば、通常では口に出さないような感謝の気持ちや仕事への賞賛などが自然と出るようになり、経営者・社員ともに働くことに喜びを感じる機会を得ることができます。

さいごに

1 on 1は、社員の「内省」の場でもあります。内省とは「自分の心と向き合い、自分の考えや言動について省みること」です。1 on 1において、社員は経営者のあなたの問いかけによって自分とも「対話」を行います。

一方で、経営者のあなたも自分自身を「内省」していく必要があります。それをセルフ1 on 1と呼んでみます。このセルフ1 on 1のやり方は人それぞれで良いと思いますが、大切なのは、自分自身をケアしなければ、他人はケアできないということです。

つまり、セルフ1 on 1で自分自身をケアして、通常の1 on 1では部下をケアしていく。そのような姿勢を大切にする心がけが必要です。

また、経営者は常に社員から、人格=あり方を見られています。自分が社員の立場で経営者を見る時、厳しい目でジャッジしている自分に気が付くのではないでしょうか?

「あり方=人格」と「やり方=スキル」はよく氷山に喩えられます。やり方は目に見えるものです。しかし、その下にはやり方を支えるあり方があります。これは海面に沈んでいるため直接は目に見えません。しかし、全ての行動がこのあり方=人格を作っていきます。それは社員のことをよく知ろうとする姿勢そのものも含まれます。

つまり、やり方は色々ありますが、そのやり方にこだわるのではなく、全てをあり方=人格を変えていく、自己成長につなげていくものであるという思いで、何事にもチャレンジして頂ければと思います。

是非、一度1 on 1を会社に取り入れることを検討してみて下さい。そして、どうやったら分からない。という方は、合わせて『1 on 1の基本的なやり方と考え方』もお読みください。

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