世の中にはフレームワークという言葉があり、あなたも一度は聞いたことがあるかと思います。
このフレームワークは、何らかの「型」や「枠組み」を意味する言葉です。業務改善や問題解決などに役立つ分析ツールや思考の枠組みを指し、思考を加速させる道具です。
つまり、物事を進めていく際に、「悩む」ことで、上手く進められない状態から、フレームワークに沿って「考える」ことで、目的・目標となるゴールを目指して、それを達成するための手段や方法論を導き出すことが容易にできるようになります。
このため、フレームワークは、思考整理の有効な道具となります。
そこで今回は、国内の99%の雇用を支える中小企業で本当につかえるマーケティングのフレームワークについて説明します。
マーケティングのフレームワーク
マーケティングで使われるフレームワークとはどのようなものがあるでしょうか。一般的には、以下のようなものが挙げられています。
- 3C分析
- VIRO分析
- PEST分析
- 5 Forces分析
- SWOT分析
- STP理論
- 4P分析
- 4C分析
ここでは、個別のフレームワークの説明は行いませんが、あなたも、これらの中でいくつかは、聞いたことがあるのではないでしょうか。
もし、あなたが、実際に使われて「思考が整理された」「極めて有効な考え方だ」と実感されている方は、是非これからも有効にご活用頂ければと思います。
しかし、「知っていて、実際に使ってみた」という人は少ないのではないでしょうか。つまり、これらのフレームワークは有効だと言われているけど、「実際に現場で使えるほど効果的だとは感じられない」というのが大半の方の正直な感覚ではないでしょうか。
あなたの感覚は、まさしく「中小企業が知っておきたいマーケティングとは」で、説明した「大企業と中小企業のマーケティングは異なるから」という理由に繋がると私は感じています。
つまり、これらフレームワークを確立したのは、大企業を相手にしたコンサルファームや大学の経営学者であり、中小企業の事情とは少し異なるわけです。
もちろん、基本的にはフレームワークは、中小企業でも使えるツールではあるとは思います。しかし、あなたが直観的に「使えない」という感覚も事実だと思います。
中小企業のためのフレームワーク
では、「中小企業のためのフレームワーク」とはどのようなものがあるのででしょうか。それが以下です。
- ABC
- FAB
- 3M
今回は、ABCについて説明します。
ABC(ABCプロセス)
世の中には、「購買行動モデル」というものがあります。
その代表的なものが「AIDA(アイーダ)」や「AIDMA(アイドマ)」と呼ばれるものですが、時代の流れとともに色々な「型」が表れています。しかし、そのプロセスはいずれも大きく分けて以下の3段階を経ています。
すなわち、
・商品・サービスの存在を知ってもらう認知段階
・その商品・サービスを買いたいと思ってもらう感情段階
・最後に、商品・サービスを買ってもらう行動段階
この3段階をあらわしたものが、このABCとなります。
具体的には、以下の英単語の頭文字を取ったものです。
- A:Attract(惹きつける)
- B:Build(関係を構築する)
- C:Convert(行動してもらう)
まず、「Attract(惹きつける)」ではあなたの商品・サービスに対して、無知・無関心な状況から、顧客の注意・関心を集めます。ここでの顧客はまだあなたのサービスを購入していないため、見込み客となります。
そして、「Build(関係を構築する)」では、見込み客との信頼関係を構築し、あなたが見込み客の抱える問題解決の専門家であることを認知してもらいます。この段階に入ると、見込み客はあなたの商品・サービスの購入について検討するようになります。
最後、「Convert(行動してもらう)」では、見込み客にあなたの商品・サービスを購入してもらい、新規客になってもらいます。ここで初めて、顧客(新規客)は自社の商品・サービスについて、最終評価を下すことになります。
ABCプロセスのポイント
このABCプロセスのポイントは、以下です。
【Attract:無料オファー】
全く興味関心がない見込み客に、あなたの商品・サービスに興味をもらってもらうためには、無料オファーが最も強力な訴求ポイントとなります。
ここで、オファーという用語を使用していますが、マーケティングでは様々な意味で用いられます。すなわち、提供するもの、特典、売り込み、などです。ここでの無料オファーは、無料特典の意味で使用しています。
但し、無料オファーの注意点として、以下2点が挙げられます。
- 最終的に買って欲しい商品に関連すること
- お客が必要なのではなく、欲しい特典であること
商品に関連しない悪い例として、住宅販売での訪問特典をケーキとする例が挙げられます。つまり、最終的に住宅は購入するつもりは全くないけれど、ケーキが欲しい人が来店することになります。これでは、将来購入してもらえる見込み客は集まりません。
また、お客が「必要とするもの」ではなく、「欲しいもの(特典)」である必要についての例は、以下が挙げられます。
ダイエットしたいという女性に対して、努力して痩せることはダイエットに「必要なこと」ですが、それを提案されても、その女性は何も魅力を感じません。それよりも「欲しいもの」は、楽して痩せることです。
つまり、「必要とするもの」ではなく、見込み客が感じる「欲しいもの」でなければ、無関心の状態から、見込み客の興味は惹き寄せられません。
【Build:共感・専門家・価値観】
ここでのポイントは3つあります。
1つ目のポイントは、共感です。この共感を得るためには、見込み客(顧客)との接触頻度を上げる必要があります。
接触頻度を上げることでザイオンス効果が得られ、共感を醸成することが可能となります。ザイオンス効果とは単純接触効果とも言われ、同じ人や物に接する回数が増えるほど、その対象に対して好印象を持つようになる効果のことです。
また、この共感を得るためには、その顧客しか知り得ない事実、またはその顧客の問題点や課題を言い当てることができれば、「この人は、自分のことを分かってくれている」という顧客に共感を持たせることが可能になります。
この、その顧客が抱える問題点や課題については、人は同じような状況下では、似たような問題や課題に行き着きます。つまり、古今東西を問わず、共通する問題や課題が存在します。
そのため、既存顧客の問題や課題を挙げるだけで、その顧客が共感を感じる問題や課題を言い当てることができるようになります。
この手法を利用しているのが、占い師です。
占い師は、大衆に当てはまる事象を、あえて言い当てるような口ぶりで言うことで、占ってもらっている当人に「言い当てられた」と思い込い込ませます。その過程を踏むことで、占い師である自分の言うことを信じ込ませようとするのです。
そして、2つ目のポイントは、専門家的立場を決定させることです。
これは先の占い師の要素にも関連してきますが、顧客がまだ気づいていない問題や、今後、顧客に降りかかるであろう課題について、こちから提起する(言い当てる)ことができれば、顧客は「この人なら、この先に待ち受ける問題や課題に対して、自分に合った商品を提示してもらえる」と信じてもらうことができます。
この信頼関係を構築することができれば、課題を解決するために必要となる、あなたが提案した方法(商品・サービス)を自ずと選んでくれるようになります。
そして、3つ目のポイントは、価値観の転換です。
これは、顧客の固定化されている価値観を転換してもらい、あなたが提供する商品・サービスの価値観を理解してもらうことです。
つまり、価値判断基準を顧客の基準ではなく、こちら側の基準に合わせてもらうことで、自社の商品の正しい価値を理解してもらい、自社の商品を選んでもらうようにすることです。
【Convert:売り込まない】
このConvertの目的は、見込み客(顧客)に行動(購入)してもらうことになりますが、ここで重要なポイントは、売り込まないことです。
つまり、顧客の問題・課題解決に、自社の商品・サービスが使えるかを明らかにしてもらい、疑問(壁)を解消してもらうことにあります。
その疑問を解消してもらった結果として、行動(購入)してもらうことが大事となります。
まとめ
今回は、中小企業が使いこなしたいフレームワークとして、ABC(ABCプロセス)を説明しました。
あなたも是非、このアプローチを考えて、見込み客との接触を試みてください。アプローチ方法が明確になると、やるべきことも明確になってきます。