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2020.01.13

イノベーションを促進する第一の法則

イノベーションを促進する第一の法則

中小企業の経営者の皆さんは、業務全般にも気を配りながら、従業員にも目を配り、忙しい日々を送っていると思います。

そして、経営に関する悩みは絶えないと思います。そのような経営者の方に少しでもお役に立てる情報を提供できればと思います。

未来を予見してイノベーションを促進する」では、田坂広志の「未来を予見する5つの法則」の全体像について説明しました。今回は、各法則について詳しく説明します。

繰り返しとなりますが「未来を予見する5つの法則」とは、以下の5つです。

第一の法則:「螺旋的プロセス」による発展の法則
第二の法則:「否定の否定」による発展の法則
第三の法則:「量から質への転化」による発展の法則
第四の法則:「対立物の相互浸透」による発展の法則
第五の法則:「矛盾の止揚」による発展の法則

「進歩・発展」と「復活・復古」の関係

第一の法則: 「螺旋的プロセス」による発展の法則では、世界はあたかも螺旋階段を登るように発展します。

すなわち、 「進歩・発展」と「復活・復古」は同時に起こります。

一般的には、「進歩」や「進化」は、未来に向かっての一直線の発展である。従って、「進歩」や「進化」とは、古いものが捨てられていくプロセスである、と捉えられる傾向にあります。

しかし、田坂氏は、「進歩」や「進化」とは、古いものが新たな価値を持って、復活してくるプロセスである、と説きます。

どのようなことか、具体例で見ていきます。

懐かしいビジネスモデルの復活

インターネット革命は、「懐かしいビジネスモデル」を復活させます。

例えば、Eコマースと呼ばれる、インターネットを使ったビジネスでは、以下のような懐かしい商いの形が、新たなビジネスとして復活しています。

  • 競り→ネットオークション
  • 指値→逆オークション
  • 共同購入→ギャザリング

※ギャザリング:購入希望者の人数によって商品の価格が変動し、希望者数が多いほど単価が安くなるオンラインショップにおける販売方法の一つ

また、Eラーニングでは「懐かしい教育システム」を復活させています。

一般的にEラーニングとは、「遠隔教育システム」と捉えがちですが、実は「個別学習システム」と捉えることが必要です。

つまり、昔の「個別学習システム」とは、欧州では「家庭教師」でした。また、日本では様々な年齢の子ども達が集って「寺子屋」で個人のペースに合わせて学んでいました。

つまり、もともと教育とは、「個別」・「自由」・「自律」型だったのです。それが、経済的な効率を求めた結果、「集団」・「一律」・「他律」型に変化したのです。

そして、再び「個別」・「自由」・「自律」型に戻っているにすぎません。

何故、ある文化が失われるのか?

また、インターネット革命は、「ボランティア」の文化を復活させています。

例えば、ネット革命によって数多く生まれてきた「ナレッジ・コミュニティ」「ネット・コミュニティ」があります。

このコミュニティでは、誰かが分からないことを質問すると、このコミュニティに参加している他メンバーが、その質問に対して様々な意見や専門知識、すなわち、価値ある「ナレッジ」を提供してくれます。

これは、かつては、地域コミュニティに存在していた「相互扶助」の文化が復活したものです。

では、何故この「相互扶助」が消えていったのか。それは、資本主義が発展したためです。資本主義により、労働人口の大量の移動が起こり、地方が過疎化し、大都市への人口の集中が起こりました。

そうした変化の中で、地域コミュニティに深く根を下ろしていた「ボランティア」の文化が失われていったのです。

「螺旋的プロセス」による発展

この「螺旋的プロセス」による発展は、「社会システム」「政治制度」「経済原理」などの大きなスケールにおいても起こっています。

例えば、「資源リサイクル」が挙げられます。

経済発展にともない、資源が安く手に入るようになり、「大量生産・大量消費」の文化が主流となりました。

昔は、不要になった製品をリサイクルして、誰かに使ってもらうと考えても、その製品を必要とする人を見つけることは、手間と時間と費用がかかるため、極めて難しかったのです。

しかし、現在では、「ネット・オークション」というリサイクル手段があります。

それ以外にも、以下のようなものが挙げられます。

  • 紙やプラスティックの再利用技術
  • 再利用しやすいエコ・マテリアルの開発
  • 廃棄物の分別回収システム
  • 再利用のインセンティンブ制度の導入

人々の環境意識の高まりと環境部課の形成などが、「新たな価値」として付加されて戻ってきています。

また、インターネット革命によって古く懐かしい「ボランタリー経済」も復活してきます。ボランタリー経済とは、人類最古の経済原理です。

現在の資本主義社会においては、「貨幣」を基軸とした「マネタリー経済」が主流です。この「マネタリー経済」以前は、「物々交換」を基本とした「バーター経済」。それ以前が「ボランタリー経済」です。

「ボランタリー経済」とは、「好意」「善意」によって、自発的に価値あるものを相手に送る「贈与の経済」です。

そして、この「ボランタリー経済」は、人類の歴史の中で、常に重要な役割を果たしてきました。例えば、家事、育児、家庭教育、老人介護、さらには、地域奉仕などの活動が挙げられます。

そういう意味で、「ボランタリー経済」は社会を支える重要な経済原理でした。しかし、この経済は、以下の二つの理由により、「陰の経済」の位置に置かれ続けていました。

第一は、この経済活動が、家庭や地域という「狭い領域」に限定されていたため。

第二は、「貨幣」という客観的尺度で評価できないため、実態が「見えない」状態であったため。

しかし、ネット革命がおこり、この状況が変わりました。第一に、ネット革命により「狭い領域」から解き放ちました。第二に「目に見えるもの」にしました。

つまり、「ネット」によって多くの人々から見えるようになったのです。

螺旋階段を登る極意

「螺旋的プロセス」による発展を見るとき、決して忘れてはならないものがあります。それは「便利になった、懐かしいもの」です。

具体的な表れは、多くの場合、かつてよりも「合理的」になり、「効率的」になり、「使いやすく」なり、「新たな機能」が付加され、「便利になっている」こと。すなわち、「懐かしいもの」が「便利になって」戻ってくるのです。

「螺旋的プロセス」の極意とは、螺旋階段を回って、ただ、元に戻ってくるわけではなく、元に戻った時、必ず一段、高い位置に登っているのです。

その際、「合理化」と「効率化」を求めて変わっていく時、「重要度の高い機能」は優先的に実現されますが、「重要度の低い機能」はその現実が後回しにされ、ときに消えていきます。

しかし、「合理化」と「効率化」が進むと、ひとたび消えていった「古いシステム」が復活するのです。

例えば、手紙は「迅速性」がある電話に変われました。その後、「迅速性」が加えられたEメールで手紙の文化が復活しました。

地域主義は「効率化」「合理化」で小売業に変わられました。しかし、近年「効率化」「合理化」を添えた地域主義が復活しました。

「進歩」「進化」とは「古いもの」が消えてゆかず、「新しいもの」と共存し、共生していくのです。

書籍の進化とは、紙の書籍が消え、全てが電子ブックになることではありません。

生物の進化においては、「古い生物種」も「新しい生物種」も共に、地上に存在しています。「進化」の本質とは、「多様化」のことです。世界が「多様性」を増していくことが「進化」なのです。

さて、皆さんの業界で、「新しいもの」に取って代わられた「古いもの」はどのようなものがありますか?その「古いもの」は、きっと時代を経て「懐かしいもの」として復活してくるはずです。

一度、そのような観点で自社の歴史を振り返って見てください。そうすれば、きっとイノベーションの種が見つかるはずです。

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