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2020.01.20

イノベーションを促進する第四の法則

イノベーションを促進する第四の法則

経営学者であるドラッガーは、

企業の目的が顧客の創造であることから、企業には2つの基本的な機能が存在することになる。すなわち、マーケティングとイノベーションである

と説き、同時に「イノベーションの7つの機会」を提案しています。

今回、このドラッガーの提案とは別に、イノベーションを促進する考え方として、田坂広志氏の「未来を予見する5つの法則」について紹介し、各法則について詳しく説明しています。

本ブログでは、第四の法則について説明します。なお、繰り返しとなりますが「未来を予見する5つの法則」は以下です。

第一の法則:「螺旋的プロセス」による発展の法則
第二の法則:「否定の否定」による発展の法則
第三の法則:「量から質への転化」による発展の法則
第四の法則:「対立物の相互浸透」による発展の法則
第五の法則:「矛盾の止揚」による発展の法則


第四の法則「対立物の相互浸透」による発展の法則
対立し競っているもの同士は、互いに似てくる。

時代が流れると、「古いものと新しいもの」、「否定するものと否定されるもの」といった、互いに対立し、競っているように見える二つのものが、お互いに相手を包み込んでいきます。
そして最終的に、両者は「融合」し、「統合」されてくる、と坂田氏は言います。

例えば、「インターネット革命」により、「リアル・ビジネス」「ネット・ビジネス」という対比される言葉が生まれました。しかし、この第四の法則からは、必ず両者は融合すると予見されていました。

街角に実際に店舗を持つ「リアル・ビジネス」とネット上に電子ショップを持つ「ネット・ビジネス」

このどちらが優れているか?過去に、このような議論がされた時期もありました。

しかし、最終的に、どのような結論になったかと言うと、「クリック・アンド・モルタル」という言葉に変わりました。つまり、「ネット」「リアル」が融合したのです。

ユニバーサル・バンクへの進化

田坂氏は、第四の法則による予見として、更に以下を挙げています。

「証券会社」「銀行」は、互いに「ユニバーサル・バンク」へと進化する。

当初、ネット証券会社が世の中に生まれてきたとき、従来の証券会社は「顧客は、インターネットなどを使って大切な株の売買などしない」と考えていました。ところが、その後、次々とオンライン・トレーディングのサービスを開始しました。

しかし、その一方で、ネット証券会社もリアルの店舗を持つようになりました。

同様に、銀行業界においても、リアルとネットの競争を通じて、相互浸透が起こり「進化した銀行になる」と予見されます。

この金融業界の動きを更に、大きく視野を広げてみるならば、証券会社と銀行も、相互浸透していくと予見されます。

「直接金融」である証券会社
「間接金融」である銀行

両者は、金融ビックバンと呼ばれる金融業に対する規制緩和と自由化の流れの中で、相互浸透するはずです。

この流れは、既に欧米では起こっており、「ユニバーサル・バンク」と呼ばれる金融業に向かって進化しています。

社会貢献企業への進化

また、「営利企業」と「非営利企業」は、互いに「社会貢献企業」へと進化すると予見されます。なぜなら、いま、以下の2つの大きな潮流が、世界に生まれているからです。

第一は「企業の社会的責任」(Corporate Social Responsibility)
第二は「社会起業家」(Social Entrepreneur)

第一の「企業の社会的責任」は、これまで利益追求を至上命題とする傾向があった「営利企業」にも、「社会的責任」と「社会貢献」が求められるようになっています。

ただ自社の利益のためだけに活動するのではなく、広く社会の利益のために活動することが求められるようになったのです。

一方、第二の「社会起業家」は、従来、社会奉仕・慈善事業などを熱心に実行・支援する篤志家からの寄付金や、政府からの補助金に頼って活動していた「非営利組織」でした。

しかし、近年、事業の自立性と継続性を確保するため、起業家精神と起業的手法によって適切な事業収益を上げ、それによって活動を自立し、継続していくという「社会起業家」の活動スタイルが求められるようになっています。

これは、ある意味で、営利企業が「社会貢献」という点で非営利組織から学び、非営利企業が「経済基盤」という点で営利企業から学びながら、両者が「相互浸透」をしている姿と言えます。

従って、これからの時代には、この「CSR」と「社会起業家」という二つの大きな潮流が合流し、その結果、「営利」と「非営利」という二項対立を超えた「社会貢献企業」(Social Enterprise)と呼ぶべき、新たな企業組織が生まれてくる、と田坂氏は予見しています。

まとめ

今回の第四の法則「対立物の相互浸透」は、ある意味、当然のことと言えます。

何故なら、企業間の競争には、たった二種類しかなく、それが「同質化」と「差別化」です。この「同質化」とは「競合他社が実行していることを真似ること」です。

つまり、この第四の法則「対立物の相互浸透」は、企業間の競争の「同質化」のことを指しているのです。

あなたの会社でも、同じ業界の競合他社を真似ることを考えたことがあるかと思います。しかし、似た商品やサービスを扱っている異なる業界を真似たことはありますか?

もしまだ、異なる業界を真似たことがないならば、異なる業界を真似ることが、あなたの会社のイノベーションの機会になるかもしれません。

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