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2020.01.20

イノベーションを促進する第三の法則

イノベーションを促進する第三の法則

経営学者であるドラッガーは、

企業の目的が顧客の創造であることから、企業には2つの基本的な機能が存在することになる。すなわち、マーケティングとイノベーションである

と説き、同時に「イノベーションの7つの機会」を提案しています。

今回、このドラッガーの提案とは別に、イノベーションを促進する考え方として、田坂広志氏の「未来を予見する5つの法則」について紹介し、各法則について詳しく説明しています。

本ブログでは、第三の法則について説明します。なお、繰り返しとなりますが「未来を予見する5つの法則」は以下です。

第一の法則:「螺旋的プロセス」による発展の法則
第二の法則:「否定の否定」による発展の法則
第三の法則:「量から質への転化」による発展の法則
第四の法則:「対立物の相互浸透」による発展の法則
第五の法則:「矛盾の止揚」による発展の法則

第三の法則「量から質への転化」による発展の法則

「量」が一定の水準を超えると「質」が劇的に変化する。

第一の法則では、「螺旋的プロセス」による発展の法則を説明しました。

この第一の法則は、世界はあたかも螺旋階段を登るように発展し、 「進歩・発展」と「復活・復古」は同時に起こることを示した法則です。すなわち、「進歩」や「進化」とは、古いものが新たな価値を持って復活してくるプロセスなのです。

では、懐かしいものの「復活」が、いつ起こるのか?
今の動きの「反転」がいつ始まるのか?

田坂氏は、このタイミングを「主戦場が移行する時期」と呼んでいます。

残念ながら、この「主戦場が移行する時期」を“予測する”方法はありません。しかし、その移行が起こるタイミングを“予見する”方法はあります。

それを過去のビデオ戦争に見ることが出来ます。

デファクトスタンダード戦争

このビデオ戦争の中でも最も有名なものが、『VHSとベータマックスのデファクトスタンダード戦争』です。

詳細は割愛しますが、この事例が示すことは以下です。

  • 異なった技術規格の新製品が市場で激しい競争を繰り広げる
  • 一つの製品がシェアで優位に立つ
  • そのシェアがあるレベルを超える
  • その時、多くの顧客が加速度的にその製品を買うようになる
  • その結果として、その製品の規格がデファクトスタンダードとなる

この現象は「シェア」という「量」の増大が、「標準」や「独占」という「質」の変化をもたらすことになります。

すなわち、この「主戦場の移行時期」を予見するためには、この「量から質への転化」を見極めることが重要です。

例えば、現在ではAmazonのレコメンド機能に代表されるような、ニューミドルマンと呼ばれる新しい中間業者が提供する「購買代理」や「購買支援」というサービスは、以前から、そのサービスに対する顧客のニーズは存在していました。

しかし、このサービスを提供することは極めて困難でした。なぜなら、「コスト」が高すぎたからです。

  • 顧客の特定のニーズに関連したすべての商品の情報を集めて提供する
  • その購買の手続きをすべて代行する

これには、膨大なコストがかかるため、顧客のコスト負担を考えた場合には、実現不可能なサービスであり、ビジネスとして成立させることができていませんでした。

言い換えれば、顧客が求める情報を届ける「情報伝達コスト」が高すぎることが、課題でした。このため、顧客のニーズはあっても、サービスとして普及しなかった最も大きな理由でした。

しかし、ネット革命が、この「コストバリア」を打ち壊したのです。

主戦場が変わるタイミングを予見する

これは、第三の法則に照らし合わせると、どのようなことを意味しているのか?

すなわち、「情報伝達コスト」の劇的な低下という「量的」な変化が、「オールドミドルマンからニューミドルマンへの進化」という質的な変化をもたらしたと言えます。

ここで極めて重要な観点があります。

それが「人々の意識」です。

ネットを使って気軽に多くの情報を入手し、商品を徹底的に比較してから買うようになった。
友人知人の意見を聞き、ネット・コミュニティで他の消費者の声を聴いてから商品を買うようになった。

そうした、「人々の意識の大きな変化が起こった」

言い換えれば、「通信料金」の量的な変化が、「人々の意識」の質的な変化をもたらしたことになります。

そして、この革命によって「人々の意識」が変わったとき、本格的な「顧客中心市場」の幕が開けたのです。

つまりは、
市場における「消費者の意識」の進化
社会における「人々の意識」の進化

これが坂田氏が言う「主戦場」を変える動きとなります。

では、その「主戦場」の移行をいかにして早めるか。市場において「量から質への転化」を加速するためには、ある商品の「価格」を一定水準よりも下げるという戦略が、重要な一つの戦略となります。

主戦場が変わるタイミングを知る

そして、ある指標の量が、一定の水準を超えたか否かを判断するにはどうすれば良いか?それは、一つの参考になる目安として「キーワード」が忘れられたか、どうかです。

つまり、「キーワード」が忘れられた時、「量」から「質」への転化が始まると言えます。

例えば、電話 FAX インターネット、Eメールなど、ネットワーク社会における新たな技術や商品やサービスが新たに登場します。そして、それらが社会全体に広がっていく時期には、それらの「キーワード」が注目され頻繁にマスメディアにも登場します。

ところが、それらが本当に社会全体に広がり浸透した時、そのような「キーワード」は忘れられていきます。

例えば、環境に優しい車として人気のハイブリッド車も、「ハイブリッド車に乗っている」という意識があるうちは、まだ本格的な普及を迎えているとは言えません。

「ハイブリット車」という「キーワード」が忘れられた時、本当に「ハイブリッド車」が社会に普及したと言えます。この時が、「主戦場が移行する時期」です。

まとめ

今回、「未来を予見する5つの法則」の第三の法則「量から質への転化」について説明しました。

現代は、技術革新が進み、新たなサービスや技術が日々生まれています。その一つ一つがイノベーションを含んでいます。そして、そのイノベーションの波に乗ることが、ビジネスチャンスを掴む上で重要であると言えます。

これから、あなたの業界で、新しい製品やサービスが登場した場合、その製品やサービスの名前が物珍しく発言されなくなるタイミングはいつになるか?

一度そのような視点で、あなたの業界内を観察することを試みてください。それを意識することで、きっと新たな発見があり、イノベーションの波に乗ることができます。

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