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中小企業の経営者は、業務全般にも気を配りながら、社員にも目を配り、忙しい日々を送っており、経営に関する悩みは絶えないかと思います。
そして、社員に関する悩み大きなウエイトを占めているのではないでしょうか。
今回、そのような経営者に向けて、今回は組織論についてお伝えします。本ブログがあなたのお役に立てることを願っています。
知っておきたい組織論
組織論の基本として、チェスター・バーナードが述べた「組織の三要素」があります。
チェスター・バーナードは、アメリカの電話会社の社長で経営学者です。
この「組織の三要素」とは、1938年に発刊した自身の著作『経営者の役割(The Functions of the Executive)』の中で述べたものです。
具体的に、チェスター・バーナードは、組織の三要素とは以下の3つであることを示しました。
- 共通目的(組織目的)
- 協働意志(貢献意欲)
- コミュニケーション
※組織の三要素の詳細な説明は、別の機会にさせて頂きます。
成功循環モデル(Core Theory of Success)
この『経営者の役割』は、組織学の原点とも言える著書ですが、近年では、MIT教授のダニエル・キムが成功循環モデル(Core Theory of Success)を発表しました。
この成功循環モデルは、組織が成功に向かうために必要な以下の4つの要素と、その関係性のサイクルを示したものです。
①関係の質
②思考の質
③行動の質
④結果の質
具体的には、これらの要素によるサイクルには、グッド・サイクルとバッド・サイクルの2つのサイクルがあります。
グッド・サイクル
一方のグッド・サイクルとは、
職場で良好な信頼関係が築かれていると(①)、
社員の思考が前向きになり、良いアイデアが生まれ(②)、
協力し合って行動することができ(③)、
その結果、当然、成果が出やすくなる(④)、
そして、ますます人間関係が良くなる(⑤①)
というプラスのサイクルが生まれることです。
バット・サイクル
バッド・サイクルとは、業績が悪い場合などに(④)、
責任を押し付け合ったり、人間関係が悪化すると(①)、
社員の思考が委縮して視野が狭くなり(②)、
前向きな行動も生まれにくくなり(③)、
その結果、当然、結果も出なくなる(④)。
そして、ますます人間関係が悪くなる(⑤①)。
というマイナスのサイクルに陥ってしまうことです。
従来の考えでは、④結果の質を向上させるためには、③行動の質を高めることが重視されてきました。
そのため、人事制度・評価など含め、目標管理などで行動を管理することが重要視されてきました。
しかし、最近では、その前段階である①関係の質や②思考の質に目を向け、もっと大きなサイクルに働きかけて成果を高めることが、重要であると指摘されています。
Google社の成功へと導く5つの鍵
また、Google社でも、大手通信社であるAP通信との共同研究結果として、チームを成功へと導く5つの鍵を発表しました。
その5つの鍵が以下であり、それぞれは重要な順であるとされています。
1.心理的安全性(Psychological Safety)
2.信頼性(Dependability)
3.構造と明確さ(Structure & Clarity)
4.仕事の意味(Meaning)
5.仕事のインパクト(Impact)
この5つの鍵の一番初め挙げられているのが、心理的安全性ですが、これは不安や恥ずかしさを感じることなくリスクある行動を取ることができるか。という要素です。
そして、グーグル社は『(成功するチームに含まれる単なる1要素ではなく)心理的安全性はその他の4つの力を支える土台であり、チームの成功に最も重要な要素』であると結論付けています。
これはダニエル・キム氏が成功循環モデルで挙げた「関係の質」と類似していると言えます。
では、これらの考えは、現代まで知られていなかったのか。というと、どうもそうではなさそうだと私は考えています。
組織を変えるために必要な要素
色々な方が調べておられ、出典は定かでないようですが、一番古いと考えられるヒンズー教の経典では、以下のような言葉があります。
- 心が変われば態度が変わる
- 態度が変われば行動が変わる
- 行動が変われば習慣が変わる
- 習慣が変われば人格が変わる
- 人格が変われば運命が変わる
- 運命が変われば人生が変わる
人生を変えるための出発点は心を変えることです。
この経典では、個人に焦点を当てていますが、チーム・組織の成果を変える(高める)ためには、やはり、関係者の心を変えていく必要がある。
古人はそのように唱えているのではないでしょうか。
では、組織内の関係の質を改善し、心理的安全性を高めていく、具体的な方法とはどのようなものがあるのでしょうか。
私がお勧めさせて頂く方法は、以下の2つです。
それは、「1 on 1」と「チェックイン」です。
1 on 1(1 on 1ミーティング)
「1 on 1」とは、ひと言で言うと、部下のための部下と上司の「対話」です。
この「対話」の対局にあるものが、上司が部下を評価するための「面談」です。
すなわち、「面談」とは、今の部下の業績や能力を上司が評価するための、上司の時間ですが、「対話」とは、上司が、部下の仕事面だけでなく、精神面や体調面などの状態を確認するとともに、今後、部下がどのようなキャリアを描きたいのかを部下自身が整理するための時間です。
あくまでも、上司はサポート役であり、主役は部下です。
その意味で「1 on 1」は部下のための時間と言えます。
「1 on 1」にも細かなテクニックは色々ありますが、基本的には、2週間から長くても1か月に一度、定期的に30分程度の「対話」を行うことです。
そして、最も大切なことは、継続することです。
この「1 on 1」については、『1 on 1の基本的なやり方と考え方』と『時代に合った組織開発法の1 on 1とは』を参考にして下さい。
チェックイン
関係の質を向上させるもう一つの方法として、「チェックイン」があります。
「チェックイン」とは、今の状態や感じていることを素直に共有しあうコミュニケーション手法です。
似たようなもので「アンガーマネジメント」というものがありあすが、この「アンガーマネジメント」は怒りを感じたら6秒間をやり過ごす。という考え方です。
一方で、「チェックイン」は、今の感情を共有しましょう。という考え方です。
「人は感情の生き物」と言われますが、その感情を素直に共有することで、相手の背景までを良く知ることができ、結果として、関係の質を高めることができます。
やり方はいたって簡単で、朝礼などで、今の感情を言い合う。ただそれだけです。
あえてポイントを挙げるなら、順番は決めないこと。
そして、周りからの質問・コメントなどは一切行わないこと。
本音を安心して語れる場が形成されることで、心理的安全性が高まることが考えられます。
あなたの家庭・職場でも、心のコミュニケーション手段はとられていますか?
もし、そのような活動がなければ、是非、あなたの職場でもこのチェックインを取り入れられては如何でしょうか。
経営学者であるドラッガーは、
企業の目的が顧客の創造であることから、企業には2つの基本的な機能が存在することになる。すなわち、マーケティングとイノベーションである
と説き、同時に「イノベーションの7つの機会」を提案しています。
今回、このドラッガーの提案とは別に、イノベーションを促進する考え方として、田坂広志氏の「未来を予見する5つの法則」について紹介し、各法則について詳しく説明しています。
本ブログでは、第五の法則について説明します。なお、繰り返しとなりますが「未来を予見する5つの法則」は以下です。
第一の法則:「螺旋的プロセス」による発展の法則
第二の法則:「否定の否定」による発展の法則
第三の法則:「量から質への転化」による発展の法則
第四の法則:「対立物の相互浸透」による発展の法則
第五の法則:「矛盾の止揚」による発展の法則
第五の法則「矛盾の止揚」による発展の法則
「矛盾」とは、世界の発展の原動力である。
これまで4回に渡って、「未来を予見する5つの法則」について説明してきました。しかし、これらの法則には、その根底に存在する最も基本となる法則があるのです。
それが、第五の法則「矛盾の止揚」による発展の法則です。
世の中の物事が、変化し、発展し、進化していくのは、その物事の中に「矛盾」があるからです。極論的には、マネジメントの本質は「矛盾のマネジメント」である、と田坂氏は言います。
一番分かりやすい例は、企業の経営における「利益の追求」と「社会貢献」の矛盾です。これは「イノベーションを促進する第四の法則」でも説明しましたが、近年では営利企業でも「社会的責任」や「社会貢献」が求められるようになっています。
すなわち、企業であるかぎり、日々「利益」を上げていかなければいけません。「利益」を上げなければ、社員に給料を払うことも、企業として存続していくこともできません。
しかし、一方で、利益に結び付かないような「社会的責任」についても営利企業として役割を果たしていく必要があります。
田坂氏は、この「矛盾」に対し、機械的に「割り切って」しまうと生命力が失われてしまう、と説き、「利益追求」と「社会貢献」の矛盾を止揚する。このことが営利企業の事業発展に必要であると唱えます。
当然、第四の法則のように、非営利である社会起業家であっても、「社会的責任」を果たしつつも「利益」も追わなければいけない。また、「営利」であっても「非営利」であっても、この「利益追求」と「社会貢献」の矛盾を止揚しなければならないのです。
この「止揚」とは、止めて、揚げること。すなわち、対立し合う二物の関係を1つ上の次元へと引き揚げるということです。
ドイツ哲学用語では、「正・反・合」を表現する「テーゼ・アンチテーゼ・ジンテーゼ」で表されます。
では、この「止揚」は如何にして行っていくのでしょうか。これを行うためには、「対話」を行う必要がある、と田坂氏は言います。
すなわち、単に意見を戦わせる「討論」でもなく、単に意見を交換する「議論」でもなく、お互いの思考を深めていくという意味で、極めて創造的な「対話」が必要なのです。
ご自身との対話や、社員との対話を通じて、矛盾をはらむ難しい課題に対して、止揚により解決策を引き出して行ってください。
対話方法
この「矛盾を止揚する」対話方法にも、様々な種類があります。
例えば、一人で自分自身と対話する「瞑想」。近年は「マインドフルネス」という瞑想の一種が広がっています。
そして、二人で行う「コーチング」。近年、注目されているのは、上司と部下の間で行うコーチング手法の一つとして「1 on 1」があります。
さらに、複数人で行う「打合せ」。これは、情報の共有や伝達だけの「会議」とは異なり、本音で「対話」できる環境作りが大切です。
1 on 1
この「1 on 1」とは「1 on 1ミーティング」とも呼ばれ、既に米国シリコンバレーでは文化として根付いており、人材育成の手法として世界的に注目を集めています。
日本では、ヤフーが導入して効果が認められたことから、国内でも広がりを見せています。
この「1 on 1」は、従来の人事評価等で行われていた「面談」とは全く異なります。
すなわち、「面談」とは「部下を評価するための上司の時間」という位置づけですが、「1 on 1」は「部下の成長のための部下ための時間」という位置づけです。
皆さんは「部下のための部下の時間」というものを意識したことはありますか?
もし、そのようなことを意識したことがなければ、是非、「1 on 1」を知って頂ければと思います。詳細説明は「1 on 1の基本的なやり方と考え方」をお読みください。
経営学者であるドラッガーは、
企業の目的が顧客の創造であることから、企業には2つの基本的な機能が存在することになる。すなわち、マーケティングとイノベーションである
と説き、同時に「イノベーションの7つの機会」を提案しています。
今回、このドラッガーの提案とは別に、イノベーションを促進する考え方として、田坂広志氏の「未来を予見する5つの法則」について紹介し、各法則について詳しく説明しています。
本ブログでは、第四の法則について説明します。なお、繰り返しとなりますが「未来を予見する5つの法則」は以下です。
第一の法則:「螺旋的プロセス」による発展の法則
第二の法則:「否定の否定」による発展の法則
第三の法則:「量から質への転化」による発展の法則
第四の法則:「対立物の相互浸透」による発展の法則
第五の法則:「矛盾の止揚」による発展の法則
第四の法則「対立物の相互浸透」による発展の法則
対立し競っているもの同士は、互いに似てくる。
時代が流れると、「古いものと新しいもの」、「否定するものと否定されるもの」といった、互いに対立し、競っているように見える二つのものが、お互いに相手を包み込んでいきます。
そして最終的に、両者は「融合」し、「統合」されてくる、と坂田氏は言います。
例えば、「インターネット革命」により、「リアル・ビジネス」と「ネット・ビジネス」という対比される言葉が生まれました。しかし、この第四の法則からは、必ず両者は融合すると予見されていました。
街角に実際に店舗を持つ「リアル・ビジネス」とネット上に電子ショップを持つ「ネット・ビジネス」
このどちらが優れているか?過去に、このような議論がされた時期もありました。
しかし、最終的に、どのような結論になったかと言うと、「クリック・アンド・モルタル」という言葉に変わりました。つまり、「ネット」と「リアル」が融合したのです。
ユニバーサル・バンクへの進化
田坂氏は、第四の法則による予見として、更に以下を挙げています。
「証券会社」と「銀行」は、互いに「ユニバーサル・バンク」へと進化する。
当初、ネット証券会社が世の中に生まれてきたとき、従来の証券会社は「顧客は、インターネットなどを使って大切な株の売買などしない」と考えていました。ところが、その後、次々とオンライン・トレーディングのサービスを開始しました。
しかし、その一方で、ネット証券会社もリアルの店舗を持つようになりました。
同様に、銀行業界においても、リアルとネットの競争を通じて、相互浸透が起こり「進化した銀行になる」と予見されます。
この金融業界の動きを更に、大きく視野を広げてみるならば、証券会社と銀行も、相互浸透していくと予見されます。
「直接金融」である証券会社
「間接金融」である銀行
両者は、金融ビックバンと呼ばれる金融業に対する規制緩和と自由化の流れの中で、相互浸透するはずです。
この流れは、既に欧米では起こっており、「ユニバーサル・バンク」と呼ばれる金融業に向かって進化しています。
社会貢献企業への進化
また、「営利企業」と「非営利企業」は、互いに「社会貢献企業」へと進化すると予見されます。なぜなら、いま、以下の2つの大きな潮流が、世界に生まれているからです。
第一は「企業の社会的責任」(Corporate Social Responsibility)
第二は「社会起業家」(Social Entrepreneur)
第一の「企業の社会的責任」は、これまで利益追求を至上命題とする傾向があった「営利企業」にも、「社会的責任」と「社会貢献」が求められるようになっています。
ただ自社の利益のためだけに活動するのではなく、広く社会の利益のために活動することが求められるようになったのです。
一方、第二の「社会起業家」は、従来、社会奉仕・慈善事業などを熱心に実行・支援する篤志家からの寄付金や、政府からの補助金に頼って活動していた「非営利組織」でした。
しかし、近年、事業の自立性と継続性を確保するため、起業家精神と起業的手法によって適切な事業収益を上げ、それによって活動を自立し、継続していくという「社会起業家」の活動スタイルが求められるようになっています。
これは、ある意味で、営利企業が「社会貢献」という点で非営利組織から学び、非営利企業が「経済基盤」という点で営利企業から学びながら、両者が「相互浸透」をしている姿と言えます。
従って、これからの時代には、この「CSR」と「社会起業家」という二つの大きな潮流が合流し、その結果、「営利」と「非営利」という二項対立を超えた「社会貢献企業」(Social Enterprise)と呼ぶべき、新たな企業組織が生まれてくる、と田坂氏は予見しています。
まとめ
今回の第四の法則「対立物の相互浸透」は、ある意味、当然のことと言えます。
何故なら、企業間の競争には、たった二種類しかなく、それが「同質化」と「差別化」です。この「同質化」とは「競合他社が実行していることを真似ること」です。
つまり、この第四の法則「対立物の相互浸透」は、企業間の競争の「同質化」のことを指しているのです。
あなたの会社でも、同じ業界の競合他社を真似ることを考えたことがあるかと思います。しかし、似た商品やサービスを扱っている異なる業界を真似たことはありますか?
もしまだ、異なる業界を真似たことがないならば、異なる業界を真似ることが、あなたの会社のイノベーションの機会になるかもしれません。
経営学者であるドラッガーは、
企業の目的が顧客の創造であることから、企業には2つの基本的な機能が存在することになる。すなわち、マーケティングとイノベーションである
と説き、同時に「イノベーションの7つの機会」を提案しています。
今回、このドラッガーの提案とは別に、イノベーションを促進する考え方として、田坂広志氏の「未来を予見する5つの法則」について紹介し、各法則について詳しく説明しています。
本ブログでは、第三の法則について説明します。なお、繰り返しとなりますが「未来を予見する5つの法則」は以下です。
第一の法則:「螺旋的プロセス」による発展の法則
第二の法則:「否定の否定」による発展の法則
第三の法則:「量から質への転化」による発展の法則
第四の法則:「対立物の相互浸透」による発展の法則
第五の法則:「矛盾の止揚」による発展の法則
第三の法則「量から質への転化」による発展の法則
「量」が一定の水準を超えると「質」が劇的に変化する。
第一の法則では、「螺旋的プロセス」による発展の法則を説明しました。
この第一の法則は、世界はあたかも螺旋階段を登るように発展し、 「進歩・発展」と「復活・復古」は同時に起こることを示した法則です。すなわち、「進歩」や「進化」とは、古いものが新たな価値を持って復活してくるプロセスなのです。
では、懐かしいものの「復活」が、いつ起こるのか?
今の動きの「反転」がいつ始まるのか?
田坂氏は、このタイミングを「主戦場が移行する時期」と呼んでいます。
残念ながら、この「主戦場が移行する時期」を“予測する”方法はありません。しかし、その移行が起こるタイミングを“予見する”方法はあります。
それを過去のビデオ戦争に見ることが出来ます。
デファクトスタンダード戦争
このビデオ戦争の中でも最も有名なものが、『VHSとベータマックスのデファクトスタンダード戦争』です。
詳細は割愛しますが、この事例が示すことは以下です。
- 異なった技術規格の新製品が市場で激しい競争を繰り広げる
- 一つの製品がシェアで優位に立つ
- そのシェアがあるレベルを超える
- その時、多くの顧客が加速度的にその製品を買うようになる
- その結果として、その製品の規格がデファクトスタンダードとなる
この現象は「シェア」という「量」の増大が、「標準」や「独占」という「質」の変化をもたらすことになります。
すなわち、この「主戦場の移行時期」を予見するためには、この「量から質への転化」を見極めることが重要です。
例えば、現在ではAmazonのレコメンド機能に代表されるような、ニューミドルマンと呼ばれる新しい中間業者が提供する「購買代理」や「購買支援」というサービスは、以前から、そのサービスに対する顧客のニーズは存在していました。
しかし、このサービスを提供することは極めて困難でした。なぜなら、「コスト」が高すぎたからです。
- 顧客の特定のニーズに関連したすべての商品の情報を集めて提供する
- その購買の手続きをすべて代行する
これには、膨大なコストがかかるため、顧客のコスト負担を考えた場合には、実現不可能なサービスであり、ビジネスとして成立させることができていませんでした。
言い換えれば、顧客が求める情報を届ける「情報伝達コスト」が高すぎることが、課題でした。このため、顧客のニーズはあっても、サービスとして普及しなかった最も大きな理由でした。
しかし、ネット革命が、この「コストバリア」を打ち壊したのです。
主戦場が変わるタイミングを予見する
これは、第三の法則に照らし合わせると、どのようなことを意味しているのか?
すなわち、「情報伝達コスト」の劇的な低下という「量的」な変化が、「オールドミドルマンからニューミドルマンへの進化」という質的な変化をもたらしたと言えます。
ここで極めて重要な観点があります。
それが「人々の意識」です。
ネットを使って気軽に多くの情報を入手し、商品を徹底的に比較してから買うようになった。
友人知人の意見を聞き、ネット・コミュニティで他の消費者の声を聴いてから商品を買うようになった。
そうした、「人々の意識の大きな変化が起こった」
言い換えれば、「通信料金」の量的な変化が、「人々の意識」の質的な変化をもたらしたことになります。
そして、この革命によって「人々の意識」が変わったとき、本格的な「顧客中心市場」の幕が開けたのです。
つまりは、
市場における「消費者の意識」の進化
社会における「人々の意識」の進化
これが坂田氏が言う「主戦場」を変える動きとなります。
では、その「主戦場」の移行をいかにして早めるか。市場において「量から質への転化」を加速するためには、ある商品の「価格」を一定水準よりも下げるという戦略が、重要な一つの戦略となります。
主戦場が変わるタイミングを知る
そして、ある指標の量が、一定の水準を超えたか否かを判断するにはどうすれば良いか?それは、一つの参考になる目安として「キーワード」が忘れられたか、どうかです。
つまり、「キーワード」が忘れられた時、「量」から「質」への転化が始まると言えます。
例えば、電話 FAX インターネット、Eメールなど、ネットワーク社会における新たな技術や商品やサービスが新たに登場します。そして、それらが社会全体に広がっていく時期には、それらの「キーワード」が注目され頻繁にマスメディアにも登場します。
ところが、それらが本当に社会全体に広がり浸透した時、そのような「キーワード」は忘れられていきます。
例えば、環境に優しい車として人気のハイブリッド車も、「ハイブリッド車に乗っている」という意識があるうちは、まだ本格的な普及を迎えているとは言えません。
「ハイブリット車」という「キーワード」が忘れられた時、本当に「ハイブリッド車」が社会に普及したと言えます。この時が、「主戦場が移行する時期」です。
まとめ
今回、「未来を予見する5つの法則」の第三の法則「量から質への転化」について説明しました。
現代は、技術革新が進み、新たなサービスや技術が日々生まれています。その一つ一つがイノベーションを含んでいます。そして、そのイノベーションの波に乗ることが、ビジネスチャンスを掴む上で重要であると言えます。
これから、あなたの業界で、新しい製品やサービスが登場した場合、その製品やサービスの名前が物珍しく発言されなくなるタイミングはいつになるか?
一度そのような視点で、あなたの業界内を観察することを試みてください。それを意識することで、きっと新たな発見があり、イノベーションの波に乗ることができます。
経営学者であるドラッガーは、
企業の目的が顧客の創造であることから、企業には2つの基本的な機能が存在することになる。すなわち、マーケティングとイノベーションである
と説き、同時に「イノベーションの7つの機会」を提案しています。
今回、このドラッガーの提案とは別に、イノベーションを促進する考え方として、田坂広志氏の「未来を予見する5つの法則」について紹介しています。
そして、各法則について詳しく説明しています。本ブログでは、第二の法則について説明します。
なお、繰り返しとなりますが「未来を予見する5つの法則」は以下です。
第一の法則:「螺旋的プロセス」による発展の法則
第二の法則:「否定の否定」による発展の法則
第三の法則:「量から質への転化」による発展の法則
第四の法則:「対立物の相互浸透」による発展の法則
第五の法則:「矛盾の止揚」による発展の法則
第二の法則:「否定の否定」による発展の法則
現在の「動き」は必ず、将来「反転」する。
第一の法則で説明したように、世の中の物事は「螺旋的プロセス」による発展を遂げていきます。これは「機能」の視点から見たものです。
一方で、「動き」の視点から見てみた場合、世の中の変化の「トレンド」を考えるならば、必ずどこかで、その「トレンド」が反対方向への「リバウンド」を起こします。
これが「否定の否定」による発展の法則です。
すなわち、現在の「動き」は必ず、将来「反転」します。
ここで述べる「否定」とは、「機械的否定」ではなく、決して「消す」や「壊す」といった意味でもなく、その段階を「超える」「超越する」といった意味です。
例えとして、陰陽道の有名な言葉が挙げられます。
陽、極まれば、陰。
陰、極まれば、陽。
「否定」の「否定」
田坂氏は「オンライン・トレーディング」を例に挙げて詳しく説明しています。
従来の「対面」のビジネスモデルは、単に株売買の「取引サービス」を提供するだけではありません。顧客に対しての市場の最新の動向を伝え、株の売買についてのアドバイスをするという「情報サービス」も行っていました。
そのため、業務コストが高く、売買手数料も高い状態でした。
このような理由から「オンライン・トレーディング」のサービスを掲げたネット証券会社は、「対面での情報サービス」をやめました。
そして「取引サービス」に絞ることで業務コストを安くすることができ、その結果、買手数料も安くすることができたのです。
これはある意味、ネット証券会社が、従来の証券会社が提供してきた「対面での情報サービス」の競争を否定したと言えます。
そして、「低価格の取引サービス」の競争に徹したことによって、オンライン・トレードは急成長しました。
これが第一の「否定」となります。
そして、数多くのネット証券会社が生まれ「価格競争」が激化し、「価格破壊」が起こりました。そして、その状況で生まれたのが、まさに「リバウンド」でした。
すなわち、オンライン・トレードでは、低価格の取引サービスを競い合う「価格競争」から、高度な情報・知識サービスを競い合う「付加価値競争」へと主戦場を移し始めました。
オンライン・トレーディングの「合理化・効率化」が極限にまで進み、コスト削減による「価格競争」も極限にまで進んだ段階で「反転」が起こりました。つまり、「リバウンド」が起こったのです。
これが第二の「否定」となります。
かつて「情報サービスの競争」を否定する形で始まった「価格競争」が、今度はその「価格競争」を否定する形で「情報サービスの競争」に向かうという「反転」が起こったのです。
これが「否定の否定」による発展の法則になります。
「反転」と「リバウンド」
もう一つ、この「反転」と「リバウンド」の例として挙げているのが「知識社会」です。
「知識社会」とは「知識が価値を持つ社会」ではなく、「知識が価値を失っていく社会」でもあります。
なぜなら、「知識社会」も深く見つめれば、螺旋的に発展していくからです。
これからの時代は「言葉で表せる知識」そのものは、だれでも手間と時間と費用をかけず、容易に入手することができるようになっていきます。
そのため、専門知識や最新知識などの「言葉で表せる知識」は、相対的な価値を失っていくことになります。
それが「知識が価値を失ていく社会」という意味です。
これからは「言葉で表せない智恵」や「非認知能力」が価値を持つようになります。
例えば、スキルやセンス、テクニックやノウハウといった「言葉で表せない智恵」が、これからの知識社会において、大きな価値を持つようになると、田坂氏は予見しています。
まとめ
今回、「未来を予見する5つの法則」の第二の法則「否定の否定」について説明しました。
あなたの業界では、過去に否定された商品・サービスは何がありますか?
その商品・サービスを否定した新しいものを否定するとすれば、どうのように否定しますか?
一度、考えてみてください。新しいイノベーションの種を発見することができるかもしれません。
中小企業の経営者の皆さんは、業務全般にも気を配りながら、従業員にも目を配り、忙しい日々を送っていると思います。
そして、経営に関する悩みは絶えないと思います。そのような経営者の方に少しでもお役に立てる情報を提供できればと思います。
「未来を予見してイノベーションを促進する」では、田坂広志の「未来を予見する5つの法則」の全体像について説明しました。今回は、各法則について詳しく説明します。
繰り返しとなりますが「未来を予見する5つの法則」とは、以下の5つです。
第一の法則:「螺旋的プロセス」による発展の法則
第二の法則:「否定の否定」による発展の法則
第三の法則:「量から質への転化」による発展の法則
第四の法則:「対立物の相互浸透」による発展の法則
第五の法則:「矛盾の止揚」による発展の法則
「進歩・発展」と「復活・復古」の関係
第一の法則: 「螺旋的プロセス」による発展の法則では、世界はあたかも螺旋階段を登るように発展します。
すなわち、 「進歩・発展」と「復活・復古」は同時に起こります。
一般的には、「進歩」や「進化」は、未来に向かっての一直線の発展である。従って、「進歩」や「進化」とは、古いものが捨てられていくプロセスである、と捉えられる傾向にあります。
しかし、田坂氏は、「進歩」や「進化」とは、古いものが新たな価値を持って、復活してくるプロセスである、と説きます。
どのようなことか、具体例で見ていきます。
懐かしいビジネスモデルの復活
インターネット革命は、「懐かしいビジネスモデル」を復活させます。
例えば、Eコマースと呼ばれる、インターネットを使ったビジネスでは、以下のような懐かしい商いの形が、新たなビジネスとして復活しています。
- 競り→ネットオークション
- 指値→逆オークション
- 共同購入→ギャザリング
※ギャザリング:購入希望者の人数によって商品の価格が変動し、希望者数が多いほど単価が安くなるオンラインショップにおける販売方法の一つ
また、Eラーニングでは「懐かしい教育システム」を復活させています。
一般的にEラーニングとは、「遠隔教育システム」と捉えがちですが、実は「個別学習システム」と捉えることが必要です。
つまり、昔の「個別学習システム」とは、欧州では「家庭教師」でした。また、日本では様々な年齢の子ども達が集って「寺子屋」で個人のペースに合わせて学んでいました。
つまり、もともと教育とは、「個別」・「自由」・「自律」型だったのです。それが、経済的な効率を求めた結果、「集団」・「一律」・「他律」型に変化したのです。
そして、再び「個別」・「自由」・「自律」型に戻っているにすぎません。
何故、ある文化が失われるのか?
また、インターネット革命は、「ボランティア」の文化を復活させています。
例えば、ネット革命によって数多く生まれてきた「ナレッジ・コミュニティ」「ネット・コミュニティ」があります。
このコミュニティでは、誰かが分からないことを質問すると、このコミュニティに参加している他メンバーが、その質問に対して様々な意見や専門知識、すなわち、価値ある「ナレッジ」を提供してくれます。
これは、かつては、地域コミュニティに存在していた「相互扶助」の文化が復活したものです。
では、何故この「相互扶助」が消えていったのか。それは、資本主義が発展したためです。資本主義により、労働人口の大量の移動が起こり、地方が過疎化し、大都市への人口の集中が起こりました。
そうした変化の中で、地域コミュニティに深く根を下ろしていた「ボランティア」の文化が失われていったのです。
「螺旋的プロセス」による発展
この「螺旋的プロセス」による発展は、「社会システム」「政治制度」「経済原理」などの大きなスケールにおいても起こっています。
例えば、「資源リサイクル」が挙げられます。
経済発展にともない、資源が安く手に入るようになり、「大量生産・大量消費」の文化が主流となりました。
昔は、不要になった製品をリサイクルして、誰かに使ってもらうと考えても、その製品を必要とする人を見つけることは、手間と時間と費用がかかるため、極めて難しかったのです。
しかし、現在では、「ネット・オークション」というリサイクル手段があります。
それ以外にも、以下のようなものが挙げられます。
- 紙やプラスティックの再利用技術
- 再利用しやすいエコ・マテリアルの開発
- 廃棄物の分別回収システム
- 再利用のインセンティンブ制度の導入
人々の環境意識の高まりと環境部課の形成などが、「新たな価値」として付加されて戻ってきています。
また、インターネット革命によって古く懐かしい「ボランタリー経済」も復活してきます。ボランタリー経済とは、人類最古の経済原理です。
現在の資本主義社会においては、「貨幣」を基軸とした「マネタリー経済」が主流です。この「マネタリー経済」以前は、「物々交換」を基本とした「バーター経済」。それ以前が「ボランタリー経済」です。
「ボランタリー経済」とは、「好意」「善意」によって、自発的に価値あるものを相手に送る「贈与の経済」です。
そして、この「ボランタリー経済」は、人類の歴史の中で、常に重要な役割を果たしてきました。例えば、家事、育児、家庭教育、老人介護、さらには、地域奉仕などの活動が挙げられます。
そういう意味で、「ボランタリー経済」は社会を支える重要な経済原理でした。しかし、この経済は、以下の二つの理由により、「陰の経済」の位置に置かれ続けていました。
第一は、この経済活動が、家庭や地域という「狭い領域」に限定されていたため。
第二は、「貨幣」という客観的尺度で評価できないため、実態が「見えない」状態であったため。
しかし、ネット革命がおこり、この状況が変わりました。第一に、ネット革命により「狭い領域」から解き放ちました。第二に「目に見えるもの」にしました。
つまり、「ネット」によって多くの人々から見えるようになったのです。
螺旋階段を登る極意
「螺旋的プロセス」による発展を見るとき、決して忘れてはならないものがあります。それは「便利になった、懐かしいもの」です。
具体的な表れは、多くの場合、かつてよりも「合理的」になり、「効率的」になり、「使いやすく」なり、「新たな機能」が付加され、「便利になっている」こと。すなわち、「懐かしいもの」が「便利になって」戻ってくるのです。
「螺旋的プロセス」の極意とは、螺旋階段を回って、ただ、元に戻ってくるわけではなく、元に戻った時、必ず一段、高い位置に登っているのです。
その際、「合理化」と「効率化」を求めて変わっていく時、「重要度の高い機能」は優先的に実現されますが、「重要度の低い機能」はその現実が後回しにされ、ときに消えていきます。
しかし、「合理化」と「効率化」が進むと、ひとたび消えていった「古いシステム」が復活するのです。
例えば、手紙は「迅速性」がある電話に変われました。その後、「迅速性」が加えられたEメールで手紙の文化が復活しました。
地域主義は「効率化」「合理化」で小売業に変わられました。しかし、近年「効率化」「合理化」を添えた地域主義が復活しました。
「進歩」「進化」とは「古いもの」が消えてゆかず、「新しいもの」と共存し、共生していくのです。
書籍の進化とは、紙の書籍が消え、全てが電子ブックになることではありません。
生物の進化においては、「古い生物種」も「新しい生物種」も共に、地上に存在しています。「進化」の本質とは、「多様化」のことです。世界が「多様性」を増していくことが「進化」なのです。
さて、皆さんの業界で、「新しいもの」に取って代わられた「古いもの」はどのようなものがありますか?その「古いもの」は、きっと時代を経て「懐かしいもの」として復活してくるはずです。
一度、そのような観点で自社の歴史を振り返って見てください。そうすれば、きっとイノベーションの種が見つかるはずです。
中小企業の経営者として、あなたは、業務全般にも気を配りながら、従業員にも目を配り、忙しい日々を送っていると思います。
そして、経営に関する悩みは絶えないと思います。そのようなあなたに、少しでも経営の役に立つ情報を提供できればと思います。
「未来を予見する5つの法則」
ドラッガーは
企業の目的が顧客の創造であることから、企業には2つの基本的な機能が存在することになる。すなわち、マーケティングとイノベーションである
と説きました。そして「イノベーションを起こすには、機会を見逃さずに、その機会に対応する必要がある」と云います。
このドラッガーの教えに加えて、このノベーションの確率を上げるために、私は世の中の流れをつかむ必要があると考えています。
そこで今回、田坂広志の「未来を予見する5つの法則」を紹介します。
田坂氏は、多摩大学大学院教授を務め、海外でも旺盛な出版と講演の活動を行っている社会起業家論者です。そして、田坂氏は「未来は予知することはできないが、予見することはできる」と説いています。
この田坂氏の「未来を予見する5つの法則」を理解し、世の中の先を読む力の一旦を少しでも見出だして頂ければ幸いです。
「未来を予見する5つの法則」は以下となります。
第一の法則:「螺旋的プロセス」による発展の法則
第二の法則:「否定の否定」による発展の法則
第三の法則:「量から質への転化」による発展の法則
第四の法則:「対立物の相互浸透」による発展の法則
第五の法則:「矛盾の止揚」による発展の法則
各法則についての事例を踏まえた詳しい説明は、別途機会を改めます。
今回は、この5つの法則の全体像をつかんで頂くため、簡単に説明します。
第一の法則:「螺旋的プロセス」による発展の法則
世界は、あたかも螺旋階段を登るように発展する。すなわち、「進歩・発展」と「復活・復古」は同時に起こる。
一般的には、「進歩」や「進化」とは、未来に向かっての一直線の発展であり、「進歩」や「進化」は古いものが捨てられていくプロセスである、と考えられる傾向にあります。
しかし、「進歩」や「進化」とは、古いものが、新たな価値を持って復活してくるプロセスなのです。
第二の法則:「否定の否定」による発展の法則
現在の「動き」は必ず、将来、「反転」する。
世の中の物事は「螺旋的プロセス」による発展を遂げていきますが、これは「機能」の視点から見たものです。
一方で、「動き」の視点から見てみた場合には、世の中の変化の「トレンド」を考えるならば、必ずどこかで、その「トレンド」が反対方向への「リバウンド」を起こします。
これが「否定の否定」による発展の法則です。すなわち、現在の「動き」は必ず、将来「反転」するという意味です。
ここで述べる「否定」とは「機械的否定」ではなく、決して「消す」や「壊す」といった意味でもなく、その段階を「超える」「超越する」といった意味です。
第三の法則:「量から質への転化」による発展の法則
「量」が一定の水準を超えると「質」が劇的に変化する。
第一法則、第二法則で、時代の流れに沿って復活するプロセスと反転するプロセスが存在することを説明しました。
この懐かしいものの「復活」が起こるのか、今の動きの「反転」がいつ始まるのかを知ることが出来れば、その対処が可能となります。
残念ながら、このタイミングを明確に予測する方法はありません。しかし、その移行が起こるタイミングを予見する方法があります。
それは、デファクトスタンダードという現象から説明することができます。デファクトスタンダードとは、公的な標準化機関等が定めた規格ではなく、市場における競争や広く採用された「結果として事実上標準化した基準」を指します。
例えば、異なった技術規格の新製品が市場で激しい競争を繰り広げた時、一つの製品がシェアで優位に立ち、そのシェアがあるレベルを超えると、多くの顧客が加速度的にその製品を買うようになります。
その結果として、その製品の規格がデファクトスタンダードとなる。ということです。
つまり、この現象は「シェア」という「量」の増大が、「標準」や「独占」という「質」の変化をもたらしたことになります。
この「復活」や「反転」が起こるタイミングを予見するためには、この「量から質への転化」を見極めることが重要となります。
第四の法則:「対立物の相互浸透」による発展の法則
対立し競っているもの同士は、互いに似てくる。
古いものと新しいもの、否定するものと否定されるものといった、対立し、競っているように見える二つのものは、必ず、お互いに相手を包み込んでいきます。そして、結果として、両者が「融合」し、「統合」されていきます。
一例を挙げると、「インターネット革命」により「リアル・ビジネス」と「ネット・ビジネス」という対比される言葉が生まれました。しかし、この第四の法則からは、必ず両者は融合すると予見されていました。
街角に実際に店舗を持つ「リアル・ビジネス」とネット上に電子ショップを持つ「ネット・ビジネス」このどちらが優れているか?過去に、このような議論がされた時期もありました。
しかし、最終的に、どのような結論になったかと言うと、「クリック・アンド・モルタル」という言葉に変わりました。つまり、「ネット」と「リアル」が融合したのです。
第五の法則:「矛盾の止揚」による発展の法則
「矛盾」とは、世界の発展の原動力である。
世の中の物事が、変化し、発展し、進化していくのは、その物事の中に「矛盾」があるからです。極論的には、マネジメントの本質は、「矛盾のマネジメント」であると言えます。
一番分かりやすい例は、企業の経営における「利益の追求」と「社会貢献」の矛盾です。
企業であるかぎり、日々「利益」を上げていかなければいけません。何故なら、「利益」を上げなければ、社員に給料を払うことも、企業として存続していくこともできないからです。
しかし、一方では、企業として「社会貢献」も求められています。この社会貢献とは、雇用を生むことや納税などを始め、地域活性化なども含まれています。
田坂氏は、「矛盾」に対し、機械的に「割り切って」しまうと生命力が失われてしまうと、説きます。
では、どうすればよいのか?田坂氏は「利益追求」と「社会貢献」の矛盾を止揚する。このことが企業の業発展に必要であるといいます。
この「止揚」とは、止めて、揚げること。すなわち、対立し合う二物の関係を1つ上の次元へと引き揚げるということです。ドイツ哲学用語では、「正・反・合」を表現する「テーゼ・アンチテーゼ・ジンテーゼ」で表されます。
これを行うための解決方法は「対話」です。
すなわち、単に意見を戦わせる「討論」でもなく、単に意見を交換する「議論」でもなく、お互いの思考を深めていくという意味で、極めて創造的な「対話」が必要です。
あなたの会社でも、常に課題が起きていると思います。しかし、この矛盾をはらむ難しい課題に対して、ご自身との対話や、社員との対話を通じた止揚により解決策を引き出すことが企業活動では重要である、ということを知って下さい。
あなたの事業がB to Cなら、売上に直結するマーケティングについては、常日頃からアンテナを張り巡らしているかと思います。
また、あなたの事業がB to Cなら、製品開発や品質向上にアンテナを張って、イノベーションという言葉に敏感に反応するかもしれません。
経営学者であるドラッガーは、以下のように説いています。
企業の目的が顧客の創造であることから、企業には2つの基本的な機能が存在することになる。すなわち、マーケティングとイノベーションである
つまり、ドラッガーは、マーケティングとイノベーションの両方が、企業活動を行う上で極めて重要な取り組みであることを説明しています。
イノベーションを起こす7つの機会
マーケティングとイノベーションの両方が、企業活動に重要な取り組みであることを理解して頂いた上で、その次に考えて頂く必要があるのは「この基本機能をどのように、企業活動の一部として仕組み化するか」です。
その解答として、ドラッガーはイノベーションの機会として以下の7つを挙げています。
すなわち、以下の7つです。
- 予期せぬ成功と失敗を利用する
- ギャップ(調和せざるもの)を探す
- ニーズを見つける
- 産業構造の変化を知る
- 人口構造の変化に着眼する
- 認識の変化をとらえる
- 新しい知識を活用する
- アイデアによるイノベーション
なお、この順番は成功確率が高い順となっています。
また、7つといいつつ、8つ挙げています。これは、8つ目は成功確率が低いため機会にすらならない、というドラッガーの意図が含まれています。
とは言え、アイデアを強制的に作っていく取り組みも、企業活動をする上で必要ですので、このアイデアを作る仕組みも、後程取り上げます。
そして、企業活動では、これらの機会を見出すための仕組みを構築することが必要となります。
予期せぬ成功と失敗を利用する仕組み
1から順に7まで詳しく見ていきたいところですが、今回は1を詳しく説明します。
まずは、最も成功の確率が高い機会を逃さずに、あなたの会社・組織で仕組み化することを試みてください。
この機会を逃さないようにするために、ドラッガーは以下のように説いています。
予期せぬ成功は、体系的に探究しなければならない。
まず行うべきは、予期せぬ成功が必ず目にとまる仕組み、注意を引く仕組みをうくることである。
マネジメントが手にし検討すべき情報のほかに、適切に位置づけることである。
出典:「イノベーションと企業家精神」 P.F.ドラッカー
つまり、仕組み化するためには、以下の3ステップが必要となります。
- 予期せぬ成功・失敗が必ず目にとまる仕組み、注意を引く仕組みをつくる
- この予期せぬ成功・失敗の情報が、マネジメント層に手に渡る仕組みをつくる
- マネジメント層が、この予期せぬ成功・失敗を体系的に探究する仕組みをつくる
ここでのポイントは、予期せぬ成功・失敗の情報が、しっかりとマネジメント層(実務を担当する以外の層)に渡るようにすることです。
何故なら、実務担当者は、現在進行形の業務への対応が主な実務となります。一方、イノベーションは未来形の業務です。
つまり、同じ現象が発生した時、現在進行形の業務と未来形の業務では、その現象が発生した時の認知が異なってくるからです。
簡単な例えでいうと、非定常業務が発生した時、以下のように認知してしまうことを想像してください。
現在進行形の対応思考:面倒くさい仕事が増えた。
未来形の対応思考:何かのヒントになるかもしれない!
同じ事実でも対応思考が異なると、その事実の受け取り方が異なってくるため、思考範囲毎に担当を分ける必要があるということです。
ディズニーランドにおける仕組み化
具体例として、アメリカのディズニーランドの例を挙げます。
たとえば、ディズニーランドの園内のショップで、お客さんがアイスクリームを買いに来たとき、そのお客さんがアイスクリーム以外の何かを望んだら、それをすべてメモしておきます。
「アトラクションのマップはありませんか」と聞かれたら、マップを所望するお客さんがいたことをメモしておくのです。
理由はその場では分析しません。
そして「この1週間で、マップを所望するお客さんが30名いた」という記録を残します。
後でこの記録を見て、「このショップには、マップを欲しがるお客さんが多い」ということがわかると、実際にそのショップにマップを置くようにします。
理由はわからなくても、対応する仕組みができているところが大切です。
そして、ここでのポイントは、メモをして記録を残していることです。
このディズニーランドでの例は、1か月単位、あるいは2か月単位で記録を見なおして、何を意味しているのかを考え、対応できるように仕組み化されているのです。
ある建築会社でのお客様の奇妙な問い合わせ
また、ある建設会社での一例を以下に挙げます。
この建設会社は、公共事業の受注を中心に業務を営んできましたが、公共支出の削減などもあり、しだいに事業は先細りになっていました。
そんな中、月に数回ほどの頻度で、奇妙な電話がかかってくることに気づきました。
それは、
「パワーショベルを持っているか?」
「ブルドーザーを持っているか?」
というものでした。
電話を取った営業担当者は、皆、間違い電話だと思い、「どちらにおかけですか?」と尋ねていました。
問合せをしたお客さまの立場になってみれば、投げかけた質問に対して「どちらにおかけですか?」と返されれば、いい気持ちはしなかったと思います。
「パワーショベルを持っているか?」
「ブルドーザーを持っているか?」
との問合せからは、何も進展がありませんでした。
お客様の奇妙な問い合わせの意図とは?
しかし、外部コンサルタントのアドバイスにより、
『なぜ、パワーショベルが必要なのか?』
『ブルドーザーが必要なのか?』
その理由をしっかり聞いてみることになりました。
すると、そこから意外なことがわかりました。電話をかけてきた人は、庭の手入れをしたかったのです。
そこで、この会社は、すぐさまガーデニング事業部を新設し、庭の手入れをするサービスを開始しました。
リフォームの仕事が少なくて減って困っていたことが嘘であったかのように、瞬く間に、ガーデニングの依頼で仕事がいっぱいになりました。
この事例について、お客さま側の心理を考えてみます。
電話をかけてきたお客さまの多くは、一度、造園業者に問合せをして、断られていました。
つまり、ひと口に造園業者と言っても、庭の手入れまで行なう造園業者もあれば、木の手入れに限定している造園業者もあります。
その地域にあった造園業者は、木の手入れだけにサービスを絞っており、お客さまからの庭の手入れは断っていました。
困ったお客さまは、自力で造園を試みるもの、自分の力では木も植えられないし、池も作れない。
そこでお客さまは、
「そうだ! リフォーム業者なら、家の修繕の延長線上で、庭の手入れをやってくれるかもしれない」
と考え、リフォーム業を営むその会社に問合せしていたのです。
しかし、一度、造園業者に断られたうえに、またリフォーム業者に断られるのは、面白くないはずです。
「業者として、庭の手入れをするためには、パワーショベルやブルドーザーを持っているはずだろう。では、『パワーショベルやブルドーザーを持っているか?』と、こちらから先に聞こう。『持っていない』という答えなら、どうせお願いできないのだから……」
そのように、多くのお客さまが考えたのではないでしょうか。
「断られる前に、庭の手入れができるかできないか、こちらで先に判断しよう」
そんな考えが、「意味不明な問合せ」になっていたのです。
この会社がガーデニングという新しいサービスで成功したのは、アイデアでもひらめきでもありません。
生まれ持ったセンスでもなければ、天から奇想天外な発想が降ってきたわけでもありません。
「予想外のお客さまからの要望」をしっかり吸い上げたことによる成功でした。
上記の事例では実際には、お客さまから「庭の手入れができないか?」と直接的な問い合わせもあったかと思います。
そのような状況も含めた上で、違和感のある客さまが来たときに、それが本当のお客さまかもしれないとの意識を持つこと。
「うちでは扱っていません」と即答することをやめることが大切であることを教えてくれています。
繰り返しとなりますが、予期せぬ成功・失敗をイノベーションの機会にするために、皆さんの会社でも、以下の仕組みを是非、検討して下さい。
- 予期せぬ成功・失敗が必ず目にとまる仕組み、注意を引く仕組みをつくる
- この予期せぬ成功・失敗の情報が、マネジメント層に手に渡る仕組みをつくる
- マネジメント層が、この予期せぬ成功・失敗を体系的に探究する仕組みをつくる
もしかしたら、明日からでも、予期せぬ成功・失敗がイノベーションを起こす機会に繋がってくるかもしれません。
今回は「イノベーション」という言葉を紐解いていきたいと思います。
「イノベーション」という横文字は、近年、世の中でよく使われています。
あなたも言葉自体は、耳にしたことがあるかと思います。
では、この「イノベーション」とは、どのようなことを意味するのでしょうか?
イノベーションの訳語として「技術革新」「新機軸」が使われることが多いです。
このため、イノベーションについて、技術的な観点で使われると思われている方は多いかもしれません。
しかしながら、イノベーションは、技術的な観点だけではありません。
イノベーションとは
イノベーションの起源は、オーストリアのヨーゼフ・シュンペンターが、1912年に発表した「経済発展の理論」に遡ります。
この発表の中でシュンペンターは「イノベーションとは、経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なる仕方で新結合すること」と定義しました。
この定義から、イノベーションとは、技術的なものに限らず、経済成長させるための全ての手段であることが示されます。
このように、経済学者であるシュンペンターは、イノベーションは”経済成長を起動する手段”である。と説きました。
経営の中でのイノベーション
一方で、経営学者であるドラッガーは、以下のように言っています。
企業の目的が顧客の創造であることから、企業には2つの基本的な機能が存在することになる。すなわち、マーケティングとイノベーションである。
つまり、経営学者であるドラッガーは、企業の活動にはマーケティングとイノベーションが不可欠である、と説いているのです。
「マーケティング」については、言葉としてもよく使われており、常日頃から意識が向いている方は多いかと思います。
一方で「イノベーション」については如何でしょうか。ドラッガーが言うように、マーケティングと同様に意識できているでしょうか?
イノベーションの5種類の型
ドラッガーは、イノベーションを以下の5つに類型化しました。
- 新しい財貨の生産
- 新しい生産方法の導入
- 新しい販売先の開拓
- 新しい供給源の獲得
- 新しい組織の実現
ここで、財貨とは新しい商品・サービスを指します。
上記5つの類型をご覧になられて、如何でしょうか。
「これなら、普通に取り組んでいるよ」と思われるのではないでしょうか。
つまり、「イノベーション」と横文字となると難しく捉えがちですが、ごく普通の企業活動であるのです。
イノベーションは意図的に起こすもの
しかしながら、この「イノベーション」を意図的に作り出せているでしょうか?
更にいうならば、”会社の仕組みとして”意図的に作り出せているでしょうか?
まだまだ、“個人の力量”、もしくは“経営者ご自身一人”に依存してる会社が多いのではないでしょうか。
このため「ウチには優秀な社員がいないので、社員にはイノベーションは起こせない」とか「ウチにはイノベーションを起こす人がいない」と半ば取り組む前から諦めていないでしょうか?
繰り返しとなりますが、イノベーションは、マーケティングと合わせて、企業に必要となる基本的な機能の2つです。
マーケティングと同様に、イノベーションを起こす会社の仕組みが会社発展のためには重要となってきます。
ちなみに、上記の5つの類型をイノベーションという言葉に変換すると以下になります。
- プロダクト・イノベーション
- プロセス・イノベーション
- マーケット・イノベーション
- サプライチェーン・イノベーション
- オルガニゼーション・イノベーション
イノベーションのジレンマ
他にも様々なイノベーションを使った言葉がありますが「イノベーションのジレンマ」は有名な言葉ですので、ここで説明しておきます。
この「イノベーションのジレンマ」とは、クレイトン・クリステンセンが、1997年に初めて提唱した、巨大企業が新興企業の前に力を失う理由を説明した企業経営の理論です。
この「イノベーションのジレンマ」を説明する前段階として、クリステンセンは「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」の2種類のイノベーションを説明しています。
持続的イノベーション
「持続的イノベーション」とは、いわゆる一般的な製品やサービス開発や発展の道筋です。
既存のお客さまのニーズを満たす改良を続けて提供価値を高めることで、自社製品やサービスのイノベーションを実現します。
世の中のほとんどがこの「持続的イノベーション」であると言われています。
破壊的イノベーション
一方で、「破壊的イノベーション」においては、一見すると低技術であるために、既存企業は、顧客に提供する価値がないものと判断してしまい、その技術や製品に見向きもしません。
しかし、顧客にとっては、必ずしも、高コストで高度な既存技術を必要としていない場合があります。
そのような場合、低技術でも低コストであれば、顧客にとっては十分に選択するに値する技術・製品となります。
そして、既存の高技術が高コストであることに対して、そのイノベーションによる技術・製品は低コストであるため、顧客が一旦その技術・製品を採用してしまうと、一気に既存市場を破壊して、市場構造を一気に変えてしまう可能性があります。
これを「破壊的イノベーション」と言います。
正しく理解しておきたい「破壊的イノベーション」
「破壊的イノベーション」と言うと、”画期的”な技術開発と誤解されている方が多いです。
しかし本来の意味での「破壊的イノベーション」は、上記したように、既存技術よりも低技術ではあるが、低コストであるがゆえに、一気に広がり、既存市場を破壊してしまうイノベーションを指しています。
つまり、以下の3つがそろう必要があります。
- 既存技術よりも低技術であること
- そのために、低コストであること
- その結果、一気に広がり、既存市場を破壊してしまうこと
そして、大企業ほど、既存技術・製品での成功があるがゆえに、この市場構造を一気に変えてしまう技術や製品、すなわち「破壊的イノベーション」に対して、受け入れることができない。
これが「イノベーションのジレンマ」です。
イノベーションという単語は、色々な場面で使われ、様々な言葉として用いられています。
私も含めて、その言葉の意味を十分に理解して使われている方は少ないのではないでしょうか。
全てを正しく理解することの難しさは、私も感じていますが、大きな勘違いがないように心がけたいと思います。
では「如何にしてイノベーションを起こすのか?」については「イノベーションを起こす7つの機会-その1-」をお読みください。
「今後のマーケティグに必須となる脳科学」では、人間の脳は、進化の過程の名残が残っており、爬虫類脳・哺乳類脳・人間脳の三層構造に分けられる。目や耳から入ってきた情報は、爬虫類脳→哺乳類脳→人間脳の順番で処理されている。
そして、人を動かす・記憶に残すために必要なのは、まずは、如何に爬虫類脳・哺乳類脳に、情報を受け入れてもらえるかが極めて重要である、と説明しました。
脳科学マーケティングの基本要素
今回、この爬虫類脳、哺乳類脳に受け入れてもらうための基本的なノウハウ・テクニックについて説明します。
具体的には基本要素として以下が挙げられます。以下、順に説明していきます。
1.原始的にする(プリミティブ)
2.比較させる
3.発見的(手法)をもりこむ(ヒューリスティック)
原始的にする(プリミティブ)
人が絶えず、興味を失わないものを指します。
言い換えれば、人類が誕生した時から常に触れ続けているものです。
そして、種を存続させていくための基本的な本能に大きく関係しています。
より具体的には、以下が挙げられます。
- 「性的な象徴」
- 「人の顔(特に赤ちゃん)」
- 「食べ物」
「性的な象徴」と言えば、やはり、水着の女性が映っている写真などは、男性陣であれば、嫌でも目が留まるのではないでしょうか。
異性に興味・関心が及ぶのは、種を存続させる基本的な本能だと言えます。
「人の顔」も爬虫類脳を刺激する要素の一つです。
特に純粋無垢な赤ちゃんの笑顔には、誰もが目を留めて見入ってしまうのではないでしょうか。
人・赤ちゃんに興味・関心が及ぶのも、子孫を残す基本的な本能だと言えます。
「食べ物」の話も人々は大好きだと思います。
古今東西問わず、おいしい物を食べたい欲求や、TVではグルメ番組は外せないカテゴリではないでしょうか。
食に興味・関心が及ぶのも、生命を存続させる基本的な本能だと言えます。
この原始的にするというテクニックは、先のマーケティングでお伝えしたABCプロセスのAttract(惹きつける)において極めて重要な要素となります。
比較させる
繰り返しとなりますが、爬虫類脳は生存本能を司る機能です。
このため、今までの日常との違いや変化には敏感に気付くようにプログラムされています。
その性質を利用して、ある行動を取った時のビフォアー・アフターを語る。といった比較要素を明示することが爬虫類脳・哺乳類脳を刺激するのに効果的です。
また、ある行動を取った時のメリットとデメリットを比較表などを用いて明示することも有効となります。
更には、これは人間脳の習性を利用したものになりますが、質問を投げかけるということも有効です。
人は、質問を投げかけると答えを探し出そうとするためです。
「○○と××では、どちらが良さそうに見えますか?」
などと、クイズ形式で比較要素を組み込むものです。
これらのテクニックは、先のマーケティングでお伝えしたABCプロセスのBuild(関係を構築する)において効果的な要素と言えます。
発見的手法をもりこむ(ヒューリスティック)
発見的手法はヒューリスティックとも言われます。
この発見的手法とは、必ず正しい答えを導けるとは限らないが、ある程度のレベルで正解に近い解を得ることができる方法を言います。
この手法では、答えの精度が保証されない代わりに、回答に至るまでの時間が少ないという特徴があります。
人は、ある選択を迫られている時、その人の脳は苦痛を感じていると言われています。
このため、選択を迫られた状況下では、人には苦痛を早く解消したいという心理が働きます。
つまり、その選択を手助けしてくれる、いわば、思考を短絡化してくれる発見的手法が効果的になってくるというわけです。
その中でもいくつか方法があり、代表的なものが以下のような社会的証明があります。
具体的にイメージしてもらえるように、一つの例を挙げてみます。
あなたは、出張で見知らぬ土地に来ました。
そろそろ、晩御飯を食べたいと思いました。
そんなあなたの目の前に、2件のお店が現れました。
1つ目のお店は、店内がガラガラです。直ぐにでも入れそうです。
しかし、念のためスマホでお店情報を確認しました。
飲食サイトにはレビューは載っていませんでした。
2つ目のお店は、お店の外にも行列ができています。
こちらのお店についてもスマホでお店情報を確認しました。
飲食サイトでも、評判のお店のようです。
この場合、あなたはどちらのお店を選ぼうと思いますか?
お腹が減りすぎて、並ぶことなく直ぐ何かを食べたい、と極限状態でない限り、おそらく2店目のお店が気になるかと思います。
これが、発見的手法の例です。
つまり、自分では判断できない、もしくは判断するより、「みんなが選んでいるものは間違いなさそうだ」と、間違いが無さそうな判断材料を引き合いに出して、最終的な判断を下すわけです。
このテクニックは、先のマーケティングでお伝えしたABCプロセスのConvert(行動を促す)において効果的な要素です。
マーケティングとは、ABCプロセスでも説明したように、最終的には「Convert/行動してもらう」ことを目的に、様々な活動を行うことになります。
これまで説明してきたように、人に行動してもらうためには、人の脳の構造・働きを知ることが重要であり、その機能を理解した上で、様々な打ち手を考えることが、有効であることを感じ取っていただけたのではないでしょうか。
この脳科学マーケティングの重要性は、近年、色々なところで言われ始めていますが、まだまだ自社のマーケティングに使われている会社は少ないように思います。
皆さんの会社におかれましても、自社のマーケティング施策について、上記のような脳科学の観点から見直して頂ければ、新たな気づきが得られるのではないでしょうか。
実際には、まだまだ、具体的な打ち手をイメージすることができないかもしれません。
しかし「脳科学がマーケティングに使われているのだ」という事実を知って頂くだけでも、これからの情報に対する感度は変わってくるかと思います。