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2020.01.13

イノベーションを起こす7つの機会-その1-

イノベーションを起こす7つの機会-その1-

あなたの事業がB to Cなら、売上に直結するマーケティングについては、常日頃からアンテナを張り巡らしているかと思います。

また、あなたの事業がB to Cなら、製品開発や品質向上にアンテナを張って、イノベーションという言葉に敏感に反応するかもしれません。

経営学者であるドラッガーは、以下のように説いています。

企業の目的が顧客の創造であることから、企業には2つの基本的な機能が存在することになる。すなわち、マーケティングとイノベーションである

つまり、ドラッガーは、マーケティングとイノベーションの両方が、企業活動を行う上で極めて重要な取り組みであることを説明しています。

イノベーションを起こす7つの機会

マーケティングとイノベーションの両方が、企業活動に重要な取り組みであることを理解して頂いた上で、その次に考えて頂く必要があるのは「この基本機能をどのように、企業活動の一部として仕組み化するか」です。

その解答として、ドラッガーはイノベーションの機会として以下の7つを挙げています。
すなわち、以下の7つです。

  1. 予期せぬ成功と失敗を利用する
  2. ギャップ(調和せざるもの)を探す
  3. ニーズを見つける
  4. 産業構造の変化を知る
  5. 人口構造の変化に着眼する
  6. 認識の変化をとらえる
  7. 新しい知識を活用する
  8. アイデアによるイノベーション

なお、この順番は成功確率が高い順となっています。

また、7つといいつつ、8つ挙げています。これは、8つ目は成功確率が低いため機会にすらならない、というドラッガーの意図が含まれています。

とは言え、アイデアを強制的に作っていく取り組みも、企業活動をする上で必要ですので、このアイデアを作る仕組みも、後程取り上げます。

そして、企業活動では、これらの機会を見出すための仕組みを構築することが必要となります。

予期せぬ成功と失敗を利用する仕組み

1から順に7まで詳しく見ていきたいところですが、今回は1を詳しく説明します。

まずは、最も成功の確率が高い機会を逃さずに、あなたの会社・組織で仕組み化することを試みてください。

この機会を逃さないようにするために、ドラッガーは以下のように説いています。

予期せぬ成功は、体系的に探究しなければならない。
まず行うべきは、予期せぬ成功が必ず目にとまる仕組み、注意を引く仕組みをうくることである。
マネジメントが手にし検討すべき情報のほかに、適切に位置づけることである。

出典:「イノベーションと企業家精神」 P.F.ドラッカー

つまり、仕組み化するためには、以下の3ステップが必要となります。

  • 予期せぬ成功・失敗が必ず目にとまる仕組み、注意を引く仕組みをつくる
  • この予期せぬ成功・失敗の情報が、マネジメント層に手に渡る仕組みをつくる
  • マネジメント層が、この予期せぬ成功・失敗を体系的に探究する仕組みをつくる

ここでのポイントは、予期せぬ成功・失敗の情報が、しっかりとマネジメント層(実務を担当する以外の層)に渡るようにすることです。

何故なら、実務担当者は、現在進行形の業務への対応が主な実務となります。一方、イノベーションは未来形の業務です。

つまり、同じ現象が発生した時、現在進行形の業務と未来形の業務では、その現象が発生した時の認知が異なってくるからです。

簡単な例えでいうと、非定常業務が発生した時、以下のように認知してしまうことを想像してください。

現在進行形の対応思考:面倒くさい仕事が増えた。
未来形の対応思考:何かのヒントになるかもしれない!

同じ事実でも対応思考が異なると、その事実の受け取り方が異なってくるため、思考範囲毎に担当を分ける必要があるということです。

ディズニーランドにおける仕組み化

具体例として、アメリカのディズニーランドの例を挙げます。

たとえば、ディズニーランドの園内のショップで、お客さんがアイスクリームを買いに来たとき、そのお客さんがアイスクリーム以外の何かを望んだら、それをすべてメモしておきます。

「アトラクションのマップはありませんか」と聞かれたら、マップを所望するお客さんがいたことをメモしておくのです。

理由はその場では分析しません。

そして「この1週間で、マップを所望するお客さんが30名いた」という記録を残します。

後でこの記録を見て、「このショップには、マップを欲しがるお客さんが多い」ということがわかると、実際にそのショップにマップを置くようにします。

理由はわからなくても、対応する仕組みができているところが大切です。

そして、ここでのポイントは、メモをして記録を残していることです。

このディズニーランドでの例は、1か月単位、あるいは2か月単位で記録を見なおして、何を意味しているのかを考え、対応できるように仕組み化されているのです。

ある建築会社でのお客様の奇妙な問い合わせ

また、ある建設会社での一例を以下に挙げます。

この建設会社は、公共事業の受注を中心に業務を営んできましたが、公共支出の削減などもあり、しだいに事業は先細りになっていました。

そんな中、月に数回ほどの頻度で、奇妙な電話がかかってくることに気づきました。
それは、

「パワーショベルを持っているか?」
「ブルドーザーを持っているか?」

というものでした。

電話を取った営業担当者は、皆、間違い電話だと思い、「どちらにおかけですか?」と尋ねていました。

問合せをしたお客さまの立場になってみれば、投げかけた質問に対して「どちらにおかけですか?」と返されれば、いい気持ちはしなかったと思います。

「パワーショベルを持っているか?」
「ブルドーザーを持っているか?」

との問合せからは、何も進展がありませんでした。

お客様の奇妙な問い合わせの意図とは?

しかし、外部コンサルタントのアドバイスにより、

『なぜ、パワーショベルが必要なのか?』
『ブルドーザーが必要なのか?』

その理由をしっかり聞いてみることになりました。

すると、そこから意外なことがわかりました。電話をかけてきた人は、庭の手入れをしたかったのです。

そこで、この会社は、すぐさまガーデニング事業部を新設し、庭の手入れをするサービスを開始しました。

リフォームの仕事が少なくて減って困っていたことが嘘であったかのように、瞬く間に、ガーデニングの依頼で仕事がいっぱいになりました。

この事例について、お客さま側の心理を考えてみます。

電話をかけてきたお客さまの多くは、一度、造園業者に問合せをして、断られていました。

つまり、ひと口に造園業者と言っても、庭の手入れまで行なう造園業者もあれば、木の手入れに限定している造園業者もあります。

その地域にあった造園業者は、木の手入れだけにサービスを絞っており、お客さまからの庭の手入れは断っていました。

困ったお客さまは、自力で造園を試みるもの、自分の力では木も植えられないし、池も作れない。

そこでお客さまは、

「そうだ! リフォーム業者なら、家の修繕の延長線上で、庭の手入れをやってくれるかもしれない」

と考え、リフォーム業を営むその会社に問合せしていたのです。

しかし、一度、造園業者に断られたうえに、またリフォーム業者に断られるのは、面白くないはずです。

「業者として、庭の手入れをするためには、パワーショベルやブルドーザーを持っているはずだろう。では、『パワーショベルやブルドーザーを持っているか?』と、こちらから先に聞こう。『持っていない』という答えなら、どうせお願いできないのだから……」

そのように、多くのお客さまが考えたのではないでしょうか。

「断られる前に、庭の手入れができるかできないか、こちらで先に判断しよう」

そんな考えが、「意味不明な問合せ」になっていたのです。

この会社がガーデニングという新しいサービスで成功したのは、アイデアでもひらめきでもありません。

生まれ持ったセンスでもなければ、天から奇想天外な発想が降ってきたわけでもありません。

「予想外のお客さまからの要望」をしっかり吸い上げたことによる成功でした。

上記の事例では実際には、お客さまから「庭の手入れができないか?」と直接的な問い合わせもあったかと思います。

そのような状況も含めた上で、違和感のある客さまが来たときに、それが本当のお客さまかもしれないとの意識を持つこと。

「うちでは扱っていません」と即答することをやめることが大切であることを教えてくれています。

繰り返しとなりますが、予期せぬ成功・失敗をイノベーションの機会にするために、皆さんの会社でも、以下の仕組みを是非、検討して下さい。

  • 予期せぬ成功・失敗が必ず目にとまる仕組み、注意を引く仕組みをつくる
  • この予期せぬ成功・失敗の情報が、マネジメント層に手に渡る仕組みをつくる
  • マネジメント層が、この予期せぬ成功・失敗を体系的に探究する仕組みをつくる

もしかしたら、明日からでも、予期せぬ成功・失敗がイノベーションを起こす機会に繋がってくるかもしれません。

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