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2020.05.08

中小企業の値上げの考え方-番外編-

中小企業の値上げの考え方-番外編-

これまで3回にわたって、経営者の立場、従業員の立場、そしてお客さまの立場からみた、「値上げ」の考え方と手順について説明してきました。

今回は番外編として、最後にお客さまにお伝えする時の態度や心構えについて説明します。最後はやはり、気持ちが大事です。

少しでも心に迷いがあれば、それがお客さまにも伝わり「本当に値上げは必要なの?」と疑問を持たれかねません。

もし、疑問を持たれたら、例え「価値」を正しく伝えられていたとしても、その「価格」に納得してもらえません。その結果、お客さまに喜んで頂けません。

是非、態度や心構えについても万全の準備をして「値上げ」をお伝えして頂ければと思います。

「値上げ」を伝える時の態度

伝える時は、堂々とした態度で

これまでの習慣の影響で、値上げは悪いこと、お客さまに迷惑をかけることであると思い込んでいたら、以下のようにお願いする姿勢を取りたくなると思います。

「あの・・・、本当に大変申し訳ないのですが、今回値上げをさせて頂きたいと思っておりまして・・・」

しかし、この姿勢は望ましくありません。極端な例になりますが、逆に以下のように伝えることをお勧めします。

「これまでにお伝えしました通り、現在このような価値をご提供させて頂いております。つきましては、サービスをよりよくしていく為に値上げをさせて頂きたいと思っております。宜しくお願いします。」
「価値が合わないということであれば、今回で契約を打ち切りにしてください。」

このように、しっかりと堂々と伝えることが大切です。実際、値上げ自体は、決して悪いことではありません。そもそも値上げの理由は、現在提供している価値と価格が見合わないからであり、その差を埋めさせて下さいという姿勢です。

値上げを伝える時、つい「お客さまに不利益を強要し、お客さまの機嫌を損ねてしまうのでは」と考えてしまいがちです。しかし、価格というのはこちらからの提案です。

お客さまが離れても、ただ「買うのを止めます」と言われるだけです。つまり、それ以上の問題が起こるわけではありません。臆せず堂々と伝える。ということを忘れないで下さい。

値上げは単なる売買契約の更新に過ぎない。
お客さまの反応を考えずに値上げをお伝えする。

伝える時は、感謝の気持ちを添えて

同じような状況で、店舗型ビジネスなどで、事前に値上げがお客さまに十分に伝わっていなかった時にお客さまから「値上げしたの?」と問われると、つい以下のように言ってしまいたくありませんか。

「○月○日から料金改定させて頂きました。すみません。」

もし、逆の立場で、ご自身がお店に行った時に「○月○日から料金改定させて頂きました。すみません。」と言われたら、何を思いますか。「謝るくらいなら値上げをするな!」と思うのではないでしょうか。

ご自身は、値上げをしたことで、その店の店員さんに謝って欲しいと考えるでしょうか。謝られても喜ぶお客さまはほとんどいないのではないでしょうか。

このような場合、値上げをした時にはお客さまには何と言えば良いのでしょうか。値上げをしたお店でお客さまが喜んでくれたとしたら、それは何をしたときでしょうか。

難しく考える必要は何もなく、ただ感謝の気持ちを込めて「いつも当店をご利用頂きありがとうございます」など、「ありがとう」の感謝を添えるだけで良いのではないでしょうか

ご自身も謝られるより、感謝される方が嬉しいと思います。つまり、お客さまにも「ありがとう」と感謝の言葉を伝えるだけで良いのです。しかし、以下では若干不自然な感じがします。

「○月○日から料金改定させて頂きました。いつも当店をご利用下さいましてありがとうございます。」

なぜ、不自然なのか。それは「値上げのお知らせの後に何かを言わなくてはいけない」と思っているからです。

言い換えれば、値上げのお知らせは事実を伝えるだけで十分です

ほとんどのお客さまは、単に値段が上がったことを確認しているだけです。よって、正しい対応は、値段が変わったことを正しくお知らせする。それ以上でもそれ以下でもありません。

しかしながら、値上げしたにも関わらず、変わらず来店してくれるお客さまは大変有難いと感じているはずです。その気持ちを「いつもご来店下さいまして、ありがとうございます。」ときちんと伝える

値上げをした後の接客では「すみません」ではなく、是非、「ありがとう」を増やすことを意識して下さい

「値上げ」を伝える時の心がまえ

値上げをして「お客さまが去るのでは」と心配をすると思います。確かに値上げをすると一部のお客さまが去ることは事実です。しかし、「お客さまが去る」ことを恐れる必要はありません。これには2つの理由があります。

値上げで得た利益分以上のお客は去って行かない

一部のお客さまは、当然値上げを許容してくれません。しかし、ここまでお伝えしてきた「価値」を伝える手順を踏んでも、それでも値上げを理解してくれないお客さまは、大半は「価格」でしか判断してくれないお客さまです。

そのようなお客さまは、もっと安いところや値頃感のある商品・サービスを見つければ、すぐに去って行きます。価格しか見ていませんので、当然のことです。

よって、遅かれ早かれ離れていく可能性が高いお客さまのために、値上げを躊躇して、それらのお客さまをつなぎ止めておこうとする必要は一切ありません。

また、よく言われるのが「値下げをして潰れた会社はたくさんあるが、値上げをして潰れた会社はない。」ということです。値上げをしたら当然、購入を止めるというお客さまがいるため、客数は一定数減ります。しかし、実は利益が増えることが多いのです。

それは、きちんと説明があって根拠が示せる値上げであれば、一部のお客さまは去っても「値上げ分の利益を上回るような数のお客さまが去ることはない」ということです。よって、値上げによって顧客が去ることを恐れる必要はありません。

値上げによって、一部のお客さまは去るが、会社に残る利益は上がる。
よって、値上げによって、お客さまが去ることは恐れる必要はない。

ビジネスの良い循環に入ることができる

前述した通り、値上げをしたことで一定数のお客さまは減ります。

しかし、価格が上がって客数が減るということは、1人のお客さまと接したり、コミュニケーションを取ったりする時間が増えるということに繋がります。その結果、お客さまの満足度を上げることが可能となります。

そして、既存のお客さまの満足度が上がると、評判が上がり、次は新規のお客さまが増える。という良い循環に入っていくとことができます。

このように、実は一部のお客さまが去る事自体は悪いことではありません。利益を増やすだけでなく、実は既存のお客さまのためにも値上げは有用であることを理解頂けると思います。

繰り返しとなりますが、前述した「価格」でしか判断していないお客さまには、早い段階で去ってもらった方が、会社だけでなくロイヤルカスタマーにとっても良い影響を及ぼします

まとめ

本書を読んで頂き「値上げはできないことはない。ということは分かった。でも、実際にやっていくのは、やっぱり色々と不安要素がある」という経営者の方も多いのではないでしょうか。

実際、焼き鳥の居酒屋チェーン大手「鳥貴族」が2017年10年に280円から298円に6 %の値上げをしたことで、長期間、売上・客数ともに減少しました。このようなニュースが流れると「やっぱり、値上げは危険だ」と考えてしまいがちです。

しかし一方で、ヘアカット専門店「QBハウス」は、2019年2月に従来の1,080円から1,200円に11 %の値上げをしても、同年2月、3月の売上は共に+ 9 %を超え、客離れは2 %に留まった事実もあります。

この2社の差は、価格以上にお客さまが受け取る価値をしっかりと提供できていたかという1点に尽きると思います。是非、皆さんも自社の商品・サービスのお客さまへ提供している価値について、今一度、問い直してみてください

もし、自社だけでは自信をもって「値上げ」ができない。とお悩みであれば、是非一度、お問合せ下さい。

皆さんのお悩みをお伺いし「値上げ」のガイドラインを無料でご提案させて頂きます。お問い合わせはコンタクトフォームからお願いいたします。

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