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2020.04.27

中小企業の値上げの考え方-従業員にむけて-

中小企業の値上げの考え方-従業員にむけて-

「値上げ」は経営者の誰しもが興味を持つテーマかと思います。しかし、実際には「値上げしたいのは当然。でも、そんなのは無理な話」と、頭から諦めている方が多いのではないでしょうか。

そのような経営者の方に「値上げの手引き」として、数回に渡って説明しています。「値上げ」に興味のある経営者の方は、是非、ご一読頂ければと思います。

値上げに対する従業員の反応は、大抵が否定的

もし、あなたが「値上げしたいのは当然。でも、そんなのは無理な話」と始めは思っていたとしても、「中小企業の値上げの考え方-経営者にむけて-」を読まれて「自社でも値上げをしていこう!」と決断されたとします。
しかし、従業員の方々から、以下のような反応が出てくる可能性が考えられます。

  • 「値上げなんて辞めるべきだ。客離れが起きて、大変なことになる」
  • 「値上げするとお世話になっている取引先が困る。我々が我慢すべきだ」
  • 「今は値上げできる段階ではない。商品力が上がってから値上げするべきだ」

このような従業員の方の意見を聞いて、経営者の皆さんは「そうだな。やっぱり値上げは諦めよう」と簡単に諦めてしまうのでしょうか。

それとも、「いや。従業員の言うことはもっともだが、値上げはやると決めたらやるのだ」と強硬突破を図ることを考えるでしょうか。

いずれにしても「値上げ」を実施するためには、まずは「値上げ」に対する正しい考え方が最も重要です。

そして、その「値上げ」に対する正しい考え方を持つ重要性は、経営者の皆さんだけではなく、従業員の方々、そして最終的にはお客さまにも当てはまります。特に、会社の発展は、経営者の皆さんの働きだけではなく、従業員の方々の協力があってこそだと思います。

そこで今回は、従業員の方々に対して、どのように考えを改め、「値上げ」に対する正しい考え方を理解して頂ければよいのか。

つまり、経営者の皆さんが、従業員の方々に向けてどのように説明すれば良いのかを示したいと思います。

以下では、先ほど挙げた従業員の方々の反応に対する、経営者としての考え方を説明します。

そして次に、経営者として従業員の方々にどのように理解してもらえば良いかについても説明していきます。

従業員の否定的な反応に、経営者としてどのように考えるのか?

値上げによって一部のお客さまが去るのは当然のこと

もし、あなたの会社・お店が今まで地域で商いを続けてきたのであれば、今までに培ってきた“信頼関係”があるはずです。

それでも、値上げをしたことで、お客さまが離れていくのであれば、それまでの関係だったということです。他の低価格の商品・サービスが出れば、遅かれ早かれ、そのお客さまは離れていきます。

確かに、値上げをすると、一定数のお客さま離れは起こります。しかし、その一定数を引き留めるために、自社商品を低価格化していくことは、自社の収益性を悪化させる要因となるため大変危険です。

今一度「お世話になっている」という意味を考える

「お世話になっている」とは、どのようなことを言うのでしょうか。仕事を頂くことは大変有り難いことです。しかし、その仕事に対してきちんとした対価を頂けていないのであれば、それは本当にお世話になっていると言えるのでしょうか。

低価格の商品・サービスでも、その価値に見合った価格であるのならば、問題はありません。

しかし、「価値に見合った価格を頂くことができていない」と感じているのであれば「お世話になっている」とは、どのようなことを言うのでしょうか。今一度考えてみてください。

本当にお世話になったというのは、近江商人の「売り手・買い手・世間の三方よし」にもあるように、売り手・買い手の双方ともに満足できる関係を言うのではないでしょうか。

日本人として我慢を美徳とする考えは否定しませんが、商いでは、一方のみが我慢するには限度があります。そのような関係を続けて、もし会社が倒産したとしたら、どうなるでしょうか。他の取引先にも多大な迷惑をかけることになるはずです。

「値上げ」の正しい順番を知る

「値上げ」の話をすると、よく聞くのが「商品力が上がったら、値上げをする」というご意見です。しかし、商品力が上がるまで、値上げを先送りする。という考えでは、いつまでたっても商品力を上げることはできず、値上げができません。

明確な目標がなければ、人は行動することはできません。「価格を上げて、それに見合う商品力をつけていく」これが目標達成するための近道です。

 

会社経営は、経営者を含め、従業員の方々の総合力です。経営者ご自身が理解されたとしても、従業員の方々が理解されていなければ、組織としてベクトルが合わず、会社として大きな決断である値上げもスムーズに進めることはできません。

是非、従業員の方々にも、値上げに取り組む意味について理解して頂くように説明をお願いしたいと思います。以下では、値上げに向けて、従業員の方々や社内に説明して頂きたい内容について記します。

値上げに対しての従業員への説明は、未来志向で

仕事や商品・サービスへの誇りを持つ

「価格の安い商品・サービスを作り、それらを売っている」

もし、あなたの会社でこのような言葉を掲げていたとして、果たしてこれで、従業員の方々は、仕事や商品・サービスに対して誇りを持つことができるでしょうか。従業員の方々が、自分の子供に誇れるような仕事と言えるでしょうか。従業員の方々が、一生をかけたい仕事、定年まで働きたい会社と思ってもらえるでしょうか。

低価格化戦略を柱としている大企業に勤めているのであれば、“大きな企業に勤めている”ということが従業員の誇りになる場合もあると思います。しかし、安売りをしている中小企業であればどうでしょうか。

確かに、安売りをすることで、地域の生活に密着し、地域の生活基盤を提供しているようなスーパーや店舗は、地域住民に感謝され、その感謝が経営者や従業員の方々の誇りに繋がっている場合もあるかと思います。よって、「一概に低価格化は全て悪い」という訳ではありません。

しかし、値上げをするということは、それだけ自社の商品・サービスが世の中で認められるということに他なりません。

そして、もしも自分たちでも価格が高いと思うのであれば、その価値に見合うように商品・サービスの価値を高めていくことも一つの目標になります。

また、値上げした価格以上に価値を高める値上げしても従来のお客さんが買ってくれる値上げしても、もっと高くても良いと言われる自分たちはそんな商品・サービスを作っている。と捉えることができれば、それこそが真の仕事への誇りになるのではないでしょうか。

生産性向上の取組みを変える

高度経済成長期の名残が残っていた従来の生産性向上は、同じ時間の中でより多くの数を作ることでした。しかし、今後は従来の生産性向上の考え方は通用しません。

何故なら、これからは人口減少や価値観の多様化など、同じものが多量に売れる時代は終わり、商品・サービスの売れる数・量は確実に減っていきます。数を作っても売れないのです。

つまり、商品・サービスの価格を据え置いたままでは、今後さらに会社の収益が減ることになります。これからの生産性向上は、より価値は高く、価格が高くても良いと思って買ってもらえる商品を作って行くことです。

そして、近年の働き方改革で、労働時間を抑えていく中でも、会社の収益を上げて、従業員の給与を上げていく。そのためにも値上げの取り組みが必要です。

もちろん給与や収入だけが全てではありません。しかし、生活する上で、収入を外して考えることもできないのが事実です。そこに労働時間や休日、家族との時間を増やすなど、時間への余裕を増やすことが、経営者だけでなく、従業員の方々も最高の状態で仕事に向き合う基盤を作ることに繋がります。

そのことが会社にとっても、従業員の方々にとっても、そして最終的にはお客さまにとっても好影響を及ぼします。

まとめ

従業員の方々に対して、働く自分たちにとって、会社にとって、未来にとって、値上げということがどれだけ大事なのかを伝えていくことにより、会社全体の意識を変えていくことができると思います。

値上げは、経営者の皆さんが決断することですが、それを具体化していくためには、従業員の方々の協力が不可欠です。

経営者ご自身として、値上げをどのように捉え、考えているのか。そして、それらを従業員の方々と共有することが重要です。

  • 値上げは、10年20年後を見据えた時に会社としての大事な戦略であること
  • 値上げは、仕事に対する誇りを持って取り組んでもらうためのもの
  • 値上げは、会社の従業員の給与や生活を高めていくためのもの
  • 値上げは、価格競争から脱却して独自性を高めていく手段であること

値上げには、正しいやり方があります。検討する前から「できるわけがない」と思考停止するのではなく、まずは「値上げする」ことを決める。次に、正しいやり方を知り、具体的なやり方を決める。そして、最後に実行していくだけです。

引き続き、値上げについて説明していきます。一連の説明が経営者の皆さんの力になれれば幸いです。

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