今回は「イノベーション」という言葉を紐解いていきたいと思います。
「イノベーション」という横文字は、近年、世の中でよく使われています。
あなたも言葉自体は、耳にしたことがあるかと思います。
では、この「イノベーション」とは、どのようなことを意味するのでしょうか?
イノベーションの訳語として「技術革新」「新機軸」が使われることが多いです。
このため、イノベーションについて、技術的な観点で使われると思われている方は多いかもしれません。
しかしながら、イノベーションは、技術的な観点だけではありません。
イノベーションとは
イノベーションの起源は、オーストリアのヨーゼフ・シュンペンターが、1912年に発表した「経済発展の理論」に遡ります。
この発表の中でシュンペンターは「イノベーションとは、経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なる仕方で新結合すること」と定義しました。
この定義から、イノベーションとは、技術的なものに限らず、経済成長させるための全ての手段であることが示されます。
このように、経済学者であるシュンペンターは、イノベーションは”経済成長を起動する手段”である。と説きました。
経営の中でのイノベーション
一方で、経営学者であるドラッガーは、以下のように言っています。
企業の目的が顧客の創造であることから、企業には2つの基本的な機能が存在することになる。すなわち、マーケティングとイノベーションである。
つまり、経営学者であるドラッガーは、企業の活動にはマーケティングとイノベーションが不可欠である、と説いているのです。
「マーケティング」については、言葉としてもよく使われており、常日頃から意識が向いている方は多いかと思います。
一方で「イノベーション」については如何でしょうか。ドラッガーが言うように、マーケティングと同様に意識できているでしょうか?
イノベーションの5種類の型
ドラッガーは、イノベーションを以下の5つに類型化しました。
- 新しい財貨の生産
- 新しい生産方法の導入
- 新しい販売先の開拓
- 新しい供給源の獲得
- 新しい組織の実現
ここで、財貨とは新しい商品・サービスを指します。
上記5つの類型をご覧になられて、如何でしょうか。
「これなら、普通に取り組んでいるよ」と思われるのではないでしょうか。
つまり、「イノベーション」と横文字となると難しく捉えがちですが、ごく普通の企業活動であるのです。
イノベーションは意図的に起こすもの
しかしながら、この「イノベーション」を意図的に作り出せているでしょうか?
更にいうならば、”会社の仕組みとして”意図的に作り出せているでしょうか?
まだまだ、“個人の力量”、もしくは“経営者ご自身一人”に依存してる会社が多いのではないでしょうか。
このため「ウチには優秀な社員がいないので、社員にはイノベーションは起こせない」とか「ウチにはイノベーションを起こす人がいない」と半ば取り組む前から諦めていないでしょうか?
繰り返しとなりますが、イノベーションは、マーケティングと合わせて、企業に必要となる基本的な機能の2つです。
マーケティングと同様に、イノベーションを起こす会社の仕組みが会社発展のためには重要となってきます。
ちなみに、上記の5つの類型をイノベーションという言葉に変換すると以下になります。
- プロダクト・イノベーション
- プロセス・イノベーション
- マーケット・イノベーション
- サプライチェーン・イノベーション
- オルガニゼーション・イノベーション
イノベーションのジレンマ
他にも様々なイノベーションを使った言葉がありますが「イノベーションのジレンマ」は有名な言葉ですので、ここで説明しておきます。
この「イノベーションのジレンマ」とは、クレイトン・クリステンセンが、1997年に初めて提唱した、巨大企業が新興企業の前に力を失う理由を説明した企業経営の理論です。
この「イノベーションのジレンマ」を説明する前段階として、クリステンセンは「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」の2種類のイノベーションを説明しています。
持続的イノベーション
「持続的イノベーション」とは、いわゆる一般的な製品やサービス開発や発展の道筋です。
既存のお客さまのニーズを満たす改良を続けて提供価値を高めることで、自社製品やサービスのイノベーションを実現します。
世の中のほとんどがこの「持続的イノベーション」であると言われています。
破壊的イノベーション
一方で、「破壊的イノベーション」においては、一見すると低技術であるために、既存企業は、顧客に提供する価値がないものと判断してしまい、その技術や製品に見向きもしません。
しかし、顧客にとっては、必ずしも、高コストで高度な既存技術を必要としていない場合があります。
そのような場合、低技術でも低コストであれば、顧客にとっては十分に選択するに値する技術・製品となります。
そして、既存の高技術が高コストであることに対して、そのイノベーションによる技術・製品は低コストであるため、顧客が一旦その技術・製品を採用してしまうと、一気に既存市場を破壊して、市場構造を一気に変えてしまう可能性があります。
これを「破壊的イノベーション」と言います。
正しく理解しておきたい「破壊的イノベーション」
「破壊的イノベーション」と言うと、”画期的”な技術開発と誤解されている方が多いです。
しかし本来の意味での「破壊的イノベーション」は、上記したように、既存技術よりも低技術ではあるが、低コストであるがゆえに、一気に広がり、既存市場を破壊してしまうイノベーションを指しています。
つまり、以下の3つがそろう必要があります。
- 既存技術よりも低技術であること
- そのために、低コストであること
- その結果、一気に広がり、既存市場を破壊してしまうこと
そして、大企業ほど、既存技術・製品での成功があるがゆえに、この市場構造を一気に変えてしまう技術や製品、すなわち「破壊的イノベーション」に対して、受け入れることができない。
これが「イノベーションのジレンマ」です。
イノベーションという単語は、色々な場面で使われ、様々な言葉として用いられています。
私も含めて、その言葉の意味を十分に理解して使われている方は少ないのではないでしょうか。
全てを正しく理解することの難しさは、私も感じていますが、大きな勘違いがないように心がけたいと思います。
では「如何にしてイノベーションを起こすのか?」については「イノベーションを起こす7つの機会-その1-」をお読みください。