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2020.01.01

経営理念を作る際に、考えておきたい要素とは

経営理念を作る際に、考えておきたい要素とは

中小企業の経営者であるあなたは、業務全般にも気を配りながら、社員にも目を配り、忙しい日々を送っており、「経営」に関する悩みは絶えないと思います。

しかし、「経営」と一言で表しても、その中身を説明することは難しいと思います。本ブログでは、そのような、つかみどころのない「経営」を理解できる、経営者のお役に立てる情報を提供しています。

今回は、経営理念についてです。

経営理念とは、どのようなものでしょうか。

経営理念についても色々と言われています。極端な言い方をすれば、経営者の理念・志が言語化されているのであれば、どのような形式でも構いません。

しかしながら、もし、参考となる作り方があるのであれば、知りたいというのが人の心情かと思います。そこで、参考にして頂きたい経営理念の作り方について、以下に説明します。

経営理念の要素

人の体が小さな細胞から構成されているように、全ての物事は小さな要素の集まりで形成されます。

経営理念も入れておきたい要素というものがあります。まずは、MVVです。これらは、一般的な経営理念の要素としてよく知られています。それぞれ、以下の英語の頭文字を取ったものです。

  • M:Mission/ミッション・使命
  • V:Vision/ビジョン・将来像
  • V:Value/バリュー・価値観

この他には、近年ではWay/方向性を取り入れる企業も増えてきています。

なお、ラテン語であるクレド(Credo)を取り入れている企業もありますが、このクレドの意味は「信条」「志」「約束」であり、総合的に経営理念と近い意味合いで使われています。

私がお勧めする要素は、上記MVVに加えて、次の要素を加えることです。

  • S:Self-image/セルフイメージ・自社の定義

このセルフイメージはDomain/ドメインとも言われ、組織体の活動範囲を指します。

では、次からは各要素について、個別に説明していきます。

Mission/ミッション

ミッションは使命と訳されるように、あなたの会社が事業を通じて社会で実現したいことです。

言い換えれば、ご自身の会社が存在している意義とも言えます。つまり、それが達成されれば、ご自身の会社が世の中に存在する必要がない。とまで言えることです。

このミッションを考える時に、経営学者であるドラッガーが提案している大切な問いがあります。それが以下です。

・機会は何か、世の中のニーズは何か?
・それは我々向きの機会か?
・心底価値を信じているか?

この問いに答えつつ、自社が何のために存在するのかを考えてみてください。

Vision/ビジョン

ビジョンは将来像と訳されるように、ミッションが実現した時の状態を指します。

ドラッガーは言います。

企業にせよ、チームにせよ、シンプルで明快なミッションを必要とする。ミッションがビジョンをもたらす。ビジョンがなければ事業とはなりえない。人の群れがあるだけである。

ビジョンは目標の要素を含むため、人によっては目標は経営理念に含めるべきではないと言われる方もいます。ここでのビジョンとしての目標は、自社の事業活動を通じて、長期的に達成したい状態を設定して頂ければと思います。

是非、ミッションとビジョンはセットで考えてください。

Value/バリュー

バリューは、あなたの会社の価値観や行動指針となります。

あなたの会社は何を基準に行動するのでしょうか?

この行動基準を明確にし、社内で共有することが、会社として成果を出す必須条件と言えます。この点については、組織論をお話しさせて頂く時に、別途詳しく説明させて頂きます。

Self-image/セルフイメージ

経営理念の要素として、Mission・Vision・Valueは、よく提案されていることですが、Self-imageについての説明は少ないように思います。

しかし、私は、経営理念を立案する上で極めて重要な要素と考えています。

以下で、このセルフイメージの重要性について少し詳しく説明します。是非、次の質問に答えてみてください。

【質問1】運動場に置いてある鉄板渡り

運動場に幅30センチ、長さ30メートルの鉄板を置いています。

「この鉄板を渡り切ったら、1万円を差し上げます」

と言われたら、皆さんはこの鉄板を渡るでしょうか?

恐らくほとんどの方が渡ることを選択するのではないでしょうか。

では、次の質問です。

【質問2】高層ツインタワー間の鉄板渡り

40階建てのツインタワーの屋上に、先ほどの幅30センチ、長さ30メートルの鉄板が渡されています。

「この鉄板を渡り切ったら、1万円を差し上げます」

なお、条件は無風状態で、先の運動場に置いてある鉄板を渡るときと同じ条件です。

この質問に対しては、恐らく大半の方が渡らないと意思決定されるにではないでしょうか。

では、続いて次の質問です。

【質問3】ツインタワーで発生した火災

同じ40階建てのツインタワーの屋上で火災が発生しました。向こうのビルに、赤ちゃんが取り残されています。

「あなたはどうしますか?」

※先ほどの幅30センチ、長さ30メートルの鉄板は渡されています。条件は無風状態で、先の運動場に置いてある鉄板を渡るときと同じ条件です。

極めて難しい判断かと思います。この質問では、赤ちゃんを助けると回答される方は多くて半分ぐらいではないでしょうか。

では、最後の質問です。

【質問4】そして、その赤ちゃんが自分の子供だったら?

この質問では、全ての方が赤ちゃんを助けに行くと回答されるかと思います。

この状況を詳しく説明すると、この高層ツインタワー屋上での火災発生の状況では、ミッションとセルフイメージは以下の関係になります。

  • ミッション  :鉄板を渡り、赤ちゃんを助け、こちらのビルに戻る
  • セルフイメージ:赤ちゃんの親

すなわち、赤ちゃんの親であるというセルフイメージが明確であれば、40階のビルの屋上であろうが、鉄板を渡り、赤ちゃんを助け、こちらのビルに戻るというミッションをやり遂げるのに、モチベーションや努力、根性は不要となります。

何の躊躇もなく、淡々とミッションをやり遂げることができるはずです。これが、セルフイメージの強力な力であり、セルフイメージの重要性です。

近視眼的マーケティング

これをもう少し経営学的な観点から説明したのが、ハーバード大のセオドア・レビットです。以下、彼が1960年に発表した「Marketing Myopia(近視眼的マーケティング)」という有名な論文があります。

セオドア・レビットは、この近視眼的マーケティングで、以下のように述べています。

そもそも世の中には成長産業といったものは存在しない。成長の機会を自ら創り、適切に資源を分配して成果を上げている個々の企業が存在するだけなのである。

 

当時自動車や航空機などの進展によって衰退へと追いやられた鉄道会社は、人や物を目的地に運ぶことと捉えず、車両を動かすことを自らの使命と定義したことが衰退の要因である。

と述べ、自らの事業領域を狭めてしまうことで、成長の機会を失ってしまう危険性を指摘しています。

すなわち、当時、鉄道会社が自らの事業領域を鉄道と捉えるのではなく、人や物を目的地に運ぶ事業であると捉えることができていれば、自動車や航空機が表れた時、自社の危機と捉えるのではなく、自社の成長の機会であると捉えることができたはずである。とセオドア・レビットは指摘しているのです。

このセルフイメージ(ドメイン)の定義を変えることで、衰退産業が復活した例は沢山あります。その一例として、ハリウッドの映画事業が挙げられます。

ハリウッドでは映画事業を自らのドメインと捉えていました。その結果、映画が衰退すると共にハリウッドも衰退の一途をたどりました。

しかし、近年のハリウッドは、映画だけでなく、人々を楽しませるエンターテインメント事業と捉え直し、映画以外の劇場事業なども手掛けることで再び活性化しています。

なお、このドメインは単に広げれば良いというわけではありません。会社によっては、事業領域をあえて絞ることで、他社との差別化を図っている例もあります。

ある缶メーカーは「自社は缶メーカーである」とドメインを定め、「あらゆるものを缶に詰める」というミッションのもとに技術開発を行いました。

その結果、従来では缶には詰めることができないとされた食品も缶詰にする技術を確立することで、他社との差別化を達成しています。

ご自身のセルフイメージはどのようなものですか?
また、自社のドメインをどのように定義されていますか?

まとめ

経営理念にも色々な作り方が提案されていますが、今回、私がお勧めする、経営理念に入れておきたい要素として以下の4つを挙げました。

M:Mission/ミッション・使命・事業目的
V:Vision/ビジョン・将来像・達成したい未来
V:Value/バリュー・価値観・行動指針
S:Self-image/セルフイメージ・自社は何者か

経営理念を立案される時は、この4つの要素をイメージし、言語化(言葉にすること)して下さい。

初めは、なかなかイメージすることができないかもしれませんが、それはこれまで考えたことがなかったからです。人は、意識し始めると答えを出そうとします。是非、考え続けてイメージを固め、そして言語化することを実践して下さい。

ご自身の会社の成長には、経営理念が必須となります。

なお、「経営理念の作成ポイントと組織浸透させる方法」で、具体的な作成ポイントと組織に経営理念を浸透させる方法について説明しています。合わせてお読み下さい。

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