人類学におけるダンパー数とは?
ダンパー数は、組織の規模が一定の規模を超えると、従業員同士の円滑な関係維持のために、外的な規則や強制力が求められるという理論です。イギリスの人類学者ロビン・ダンパーは、霊長類の群れの大きさが脳のサイズに相関していることを発見し、人間社会でも安定的な関係を維持できるのは150人程度であると提唱しました。
組織サイズの節目とその必要性
このダンパー数を応用して、節目となる組織サイズがあると言われています。具体的には、5人、15人、50人、150人、500人という数字です。そして、各節目を超えた時、組織の機能が変化し、それに伴って新たな規則やノルマが必要になってくる、と言われています。
このブログでは、これらの節目を乗り越えるために何が必要かを各規模に合わせて解説していきます。組織サイズの違いをイメージしやすくするため、まずは野球チームを例に考えてみます。
組織の成長段階を野球チームに例えると
1. 5人(草野球チーム)
- 仲の良いメンバーで成り立っているチーム。
- 時に人数が足りなくても、「野球が好き」という共通の価値観で集まっている。
2. 15人(社会人チーム)
- 毎試合9人以上が集まり、力試しに市民リーグに参加するレベル。
- 「遅刻しない」「無断欠席しない」といった最低限のルールが必要になる。
3. 50人(強豪レベルの社会人チーム)
- 1軍・2軍など、実力に応じたチーム分けが行われる。
- 「選抜基準」など、能力に応じた評価が必要になってくる。
4. 150人(アマチュアのクラブチーム)
- 選手だけでは運営できなくなり、スタッフやバックオフィスが必要になる。
- 「採用」「育成」などの仕組みを整備する必要がある。
5. 500人(プロのクラブチーム)
- 事業運営のための「収益目標」が求められる。
- 各カテゴリーでの役割分担が必要。
会社経営での各組織の特徴と必要な規則・ノルマ
この区切りとなる組織サイズと必要な規制・ノルマについて、会社経営に置き換えてみると以下のように考えることができます。
ダンパー数を参考にした組織サイズの節目
組織サイズ (人数) |
必要な 規制・ノルマ |
説明 |
5人 (3~7人) |
共通目的 (経営理念) |
明確な役割は不要。経営理念に共感した仲間が集まり、組織文化を作り上げることが可能である。 |
15人 (10~20人) |
就業規則 | 社員間での役割分担が始まり、労働条件や規律が必要となる。 |
50人 (30~70人) |
人事制度 | 人事評価基準や昇進・昇給の基準が求められ、育成体制の確立が重要となる。 |
150人 (100~200人) |
組織機能図 | 部門間の連携が重要になり、階層別の業務分担や責任範囲を明確にする必要がある。 |
500人 (300~700人) |
独立採算制の 事業部制 |
事業部ごとの自立運営が求められ、収益目標やコスト管理を精緻化が求められる。 |
1. 5人組織
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特徴: 少人数なのでフラットで柔軟な働き方が可能。個々の役割はあまり厳密ではなく、自由度が高い。
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規則: 経営理念や経営指針は、組織が目指す方向性を全員が共有するために不可欠。ここでの焦点は「価値観の共有」です。
2. 15人組織
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特徴: 役割分担が進み、コミュニケーションの効率が求められるようになります。従業員の働き方に一定のルールが必要。
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規則: 就業規則により、労働条件や行動規範を明確化。社員間のトラブルを避けるために、基本的な規律が必要です。
3. 50人組織
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特徴: 業務が分担され、管理職も増えてきます。組織内の情報の流れが複雑化し、管理体制が重要になります。
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規則: 人事制度が必要。評価基準や昇進・昇給のルールを設けることで、社員の会社への貢献に基づいた処遇を決定します。
4. 150人組織
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特徴: 部門間の連携が複雑になり、明確な組織構造と責任範囲が求められます。トップダウンだけでは運営が困難に。
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規則: 社長をトップとした文鎮型組織に限界がきます。複数階層の組織機能図を作成して各部門ごとに責任者を立て、役割や目標を明確にすることが重要です。
5. 500人組織
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特徴: 複数の事業部門が並行して運営されるため、各部門が独立して運営される必要があります。個々の事業部が収益目標を持ちます。
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規則: 各事業部の自立性を強化するために、独立採算制を導入し、事業部ごとに収益目標を設定します。組織全体の効率を上げるために、収益とコスト管理が重要です。
まとめ
企業の成長に伴い、組織の課題も変化し、それに応じた仕組みやルールの整備が必要になります。
例えば、労働基準法では、社員数が10人を超えると就業規則の作成が義務付けられますが、ダンパー数の視点からも15人を超えたタイミングで「新たな規制」が必要になると考えると、合理的な根拠と言えるでしょう。
この就業規則のように、組織の成長に伴い、適切なタイミングで制度を整備していくことが、安定した経営に必要不可欠と言えます。
現在の貴社の組織サイズはどの段階でしょうか? そして、必要な仕組みは整備されていますか?