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2020.01.30

成果を出す組織~関係の質~

成果を出す組織~関係の質~

中小企業の経営者は、業務全般にも気を配りながら、社員にも目を配り、忙しい日々を送っており、経営に関する悩みは絶えないかと思います。

そして、社員に関する悩み大きなウエイトを占めているのではないでしょうか。

今回、そのような経営者に向けて、今回は組織論についてお伝えします。本ブログがあなたのお役に立てることを願っています。

知っておきたい組織論

組織論の基本として、チェスター・バーナードが述べた「組織の三要素」があります。

チェスター・バーナードは、アメリカの電話会社の社長で経営学者です。
この「組織の三要素」とは、1938年に発刊した自身の著作『経営者の役割(The Functions of the Executive)』の中で述べたものです。

具体的に、チェスター・バーナードは、組織の三要素とは以下の3つであることを示しました。

  • 共通目的(組織目的)
  • 協働意志(貢献意欲)
  • コミュニケーション

※組織の三要素の詳細な説明は、別の機会にさせて頂きます。

成功循環モデル(Core Theory of Success)

この『経営者の役割』は、組織学の原点とも言える著書ですが、近年では、MIT教授のダニエル・キムが成功循環モデル(Core Theory of Success)を発表しました。

この成功循環モデルは、組織が成功に向かうために必要な以下の4つの要素と、その関係性のサイクルを示したものです。

①関係の質
②思考の質
③行動の質
④結果の質

具体的には、これらの要素によるサイクルには、グッド・サイクルとバッド・サイクルの2つのサイクルがあります。

グッド・サイクル

一方のグッド・サイクルとは、
職場で良好な信頼関係が築かれていると(①)、
社員の思考が前向きになり、良いアイデアが生まれ(②)、
協力し合って行動することができ(③)、
その結果、当然、成果が出やすくなる(④)、
そして、ますます人間関係が良くなる(⑤①)
というプラスのサイクルが生まれることです。

バット・サイクル

バッド・サイクルとは、業績が悪い場合などに(④)、
責任を押し付け合ったり、人間関係が悪化すると(①)、
社員の思考が委縮して視野が狭くなり(②)、
前向きな行動も生まれにくくなり(③)、
その結果、当然、結果も出なくなる(④)。
そして、ますます人間関係が悪くなる(⑤①)。
というマイナスのサイクルに陥ってしまうことです。

従来の考えでは、④結果の質を向上させるためには、③行動の質を高めることが重視されてきました。
そのため、人事制度・評価など含め、目標管理などで行動を管理することが重要視されてきました。

しかし、最近では、その前段階である①関係の質や②思考の質に目を向け、もっと大きなサイクルに働きかけて成果を高めることが、重要であると指摘されています。

Google社の成功へと導く5つの鍵

また、Google社でも、大手通信社であるAP通信との共同研究結果として、チームを成功へと導く5つの鍵を発表しました。

その5つの鍵が以下であり、それぞれは重要な順であるとされています。

1.心理的安全性(Psychological Safety)
2.信頼性(Dependability)
3.構造と明確さ(Structure & Clarity)
4.仕事の意味(Meaning)
5.仕事のインパクト(Impact)

この5つの鍵の一番初め挙げられているのが、心理的安全性ですが、これは不安や恥ずかしさを感じることなくリスクある行動を取ることができるか。という要素です。
そして、グーグル社は『(成功するチームに含まれる単なる1要素ではなく)心理的安全性はその他の4つの力を支える土台であり、チームの成功に最も重要な要素』であると結論付けています。

これはダニエル・キム氏が成功循環モデルで挙げた「関係の質」と類似していると言えます。

では、これらの考えは、現代まで知られていなかったのか。というと、どうもそうではなさそうだと私は考えています。

組織を変えるために必要な要素

色々な方が調べておられ、出典は定かでないようですが、一番古いと考えられるヒンズー教の経典では、以下のような言葉があります。

  • 心が変われば態度が変わる
  • 態度が変われば行動が変わる
  • 行動が変われば習慣が変わる
  • 習慣が変われば人格が変わる
  • 人格が変われば運命が変わる
  • 運命が変われば人生が変わる

人生を変えるための出発点は心を変えることです。
この経典では、個人に焦点を当てていますが、チーム・組織の成果を変える(高める)ためには、やはり、関係者の心を変えていく必要がある。
古人はそのように唱えているのではないでしょうか。

では、組織内の関係の質を改善し、心理的安全性を高めていく、具体的な方法とはどのようなものがあるのでしょうか。

私がお勧めさせて頂く方法は、以下の2つです。
それは、「1 on 1」と「チェックイン」です。

1 on 1(1 on 1ミーティング)

「1 on 1」とは、ひと言で言うと、部下のための部下と上司の「対話」です。

この「対話」の対局にあるものが、上司が部下を評価するための「面談」です。

すなわち、「面談」とは、今の部下の業績や能力を上司が評価するための、上司の時間ですが、「対話」とは、上司が、部下の仕事面だけでなく、精神面や体調面などの状態を確認するとともに、今後、部下がどのようなキャリアを描きたいのかを部下自身が整理するための時間です。

あくまでも、上司はサポート役であり、主役は部下です。
その意味で「1 on 1」は部下のための時間と言えます。

「1 on 1」にも細かなテクニックは色々ありますが、基本的には、2週間から長くても1か月に一度、定期的に30分程度の「対話」を行うことです。

そして、最も大切なことは、継続することです。

この「1 on 1」については、『1 on 1の基本的なやり方と考え方』『時代に合った組織開発法の1 on 1とは』を参考にして下さい。

チェックイン

関係の質を向上させるもう一つの方法として、「チェックイン」があります。

「チェックイン」とは、今の状態や感じていることを素直に共有しあうコミュニケーション手法です。

似たようなもので「アンガーマネジメント」というものがありあすが、この「アンガーマネジメント」は怒りを感じたら6秒間をやり過ごす。という考え方です。

一方で、「チェックイン」は、今の感情を共有しましょう。という考え方です。

「人は感情の生き物」と言われますが、その感情を素直に共有することで、相手の背景までを良く知ることができ、結果として、関係の質を高めることができます。

やり方はいたって簡単で、朝礼などで、今の感情を言い合う。ただそれだけです。
あえてポイントを挙げるなら、順番は決めないこと。
そして、周りからの質問・コメントなどは一切行わないこと。

本音を安心して語れる場が形成されることで、心理的安全性が高まることが考えられます。

あなたの家庭・職場でも、心のコミュニケーション手段はとられていますか?
もし、そのような活動がなければ、是非、あなたの職場でもこのチェックインを取り入れられては如何でしょうか。

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