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2020.03.23

お金の「勘定」と「儲け」

お金の「勘定」と「儲け」

経営者の多くは、財務会計に対する苦手意識を持たれている方が多いように感じています。その理由として、「財務会計は難しい」とか「自分には理解できない」というネガティブな先入観が大きな要因であると感じています。

このネガティブな先入観を改めてもらうためには、「財務諸表の『つながり』を抑える」をお読み下さい。

一方、苦手意識がない場合でも、「結局、粗利さえ押さえておけば大丈夫。経営に財務会計は必要でない」という考えも、財務会計の学びを遠ざけている要素ではないでしょうか。

経営に財務会計は必要ではない!?

今回、経営者が「経営に財務会計は必要でない」という考えに至る理由について、私なりに考えてみました。あなたはどう感じるでしょうか。

一つ目は、「財務会計は、経営に活かせない」
二つ目は、「財務会計の数字は、経営の肌感覚と異なる」

それぞれについて、詳しく説明してみたいと思います。

財務会計の数字を知ったところで経営に活かせない

一つ目の「財務会計は、経営に活かせない」についてです。

経営者が本当に必要としているのは「今日までがどうだったのか。それを踏まえて、明日からは何をすればよいのか?」という、今後の具体的な行動指針です。

ところが、財務会計の数値は、結果を示しているだけです。経営者に「明日から、どうする?」という考えるキッカケは与えてくれますが「何をすればよいか?」という問いには答えてくれません。

このため、経営者が「財務会計は、経営に活かせない」との考えに至るのは、当然のこと言えます。

特に、財務会計の中でも損益計算書は「死亡診断書」と言われています。ビジネスの最後に集計された結果数値であるため、当然、明日からの経営に使えるものではありません。

財務会計の数字は経営している肌感覚と異なる

そして、二つ目の「財務会計の数字は、経営の肌感覚と異なる」について説明します。

この言葉をもう少し詳しく説明すると「経営者の立場で現場を見ている数値と、決算書の財務会計の数値に、感覚的に乖離がある。このため、財務会計は経営に使えない」との考えに至る経営者の方が多い、と言えます。

貸借対照表の2種類の「お金」

この「財務会計の数字は、経営の肌感覚と異なる」のは、貸借対照表で「2種類のお金」が使われていることが原因です。

この「2種類のお金」とは、「絶対額のお金」と「評価額のお金」の二つです。

「絶対額のお金」とは、現金、貯金、受取手形などのその額で現金化できるお金
「評価額のお金」とは、製品、仕掛品、建物などのその額で現金化できないお金

経営者の肌感覚のお金は、この「絶対額のお金」を指します。

しかし、財務会計では「評価額のお金」も計上します。つまり、この種類の異なる2種のお金が同じ表内で記載されることで、結果的に、経営者の肌感覚に合わない数字となってしまうわけです。

2種類のお金を生む原因は原価計算にあり

では、何故、この「絶対額のお金」と「評価額のお金」の2種類のお金が生まれてしまったのでしょうか?その原因は、原価計算にあります。

実は、原価計算には、直接原価(DC, Direct costing)と全部原価(FC, Full Costing)の二つの考え方があります。商業が使っている直接原価(DC)に対して、全部原価(FC)は、税法やその他で義務付けられているため、世の中では全部原価(FC)が主流となっています。

しかし、全部原価(FC)は、例えばメーカーであれば、原材料費だけでなく、工場での固定費を製造原価として製品に配分します。このため、製品の数量が倍になると製品の固定費の負担が半分になるなど、製品一つ当りの製造原価が生産量によって変わります。

つまり、法的会計で使われている全部原価(FC)では、固定費が割り勘で計算されます。そして、売れた分は売上原価として計上されますが、売れなかった分は在庫として貸借対照表に資産計上されます。

これが「評価額のお金」を生む要因です。そして、この「評価額のお金」が、実在しない評価額の利益を生むことになり、経営者の感覚とズレる要因となるのです。

これが、タイトルにした「お金の『勘定』と『儲け』は異なる」ということです。

経営に使える財務会計の管理指標

これら財務会計の課題を解決するための管理指標が考え出されました。それが、京セラの「アメーバ経営」や、トヨタ自動車の「原価企画」と呼ばれる、いわゆる管理会計です。

京セラの「アメーバ経営」は、京セラ創業者の稲盛和夫が考案した管理会計です。

この考案の裏には、稲盛氏が技術屋として「評価額のお金」という考え方が納得できず、「評価額のお金」という考え方が間違っている、という思いがありました。

その結果、「評価額のお金」を考慮しない経営を目指したことで「アメーバ経営」が生まれたのです。

「アメーバ経営」では、「在庫は悪」「仕入は全て計上」など、随所に「評価額のお金」を考慮しない考えが取り入れられています。

また、トヨタの代表的な生産管理であるJIT(Just In Time)の根幹は「在庫を持たない」という考えにあります。これは、極力「評価額のお金」を考慮しないようにするための手段だと言えます。

このように、経営で使える管理会計の大きな一つのポイントは、「評価額のお金」の要因となる「在庫」の考え方にあります。

まとめ

多くの経営者は「財務会計は経営に使えない」ツールであり、勉強するに値しないと考える傾向にあります。あなたも、そのように考えていませんか?

何故、そのように考えてしまうのか?

それは、財務会計は結果しか示してくれないこと。そして、財務会計では2種類のお金を使っていること。これら二つが原因です。つまり、あなたを含めた多くの経営者が「財務会計は経営に使えない」という感覚は、ある意味当然、と言えます。

しかし、だからと言って「財務会計は不要である」とは言えません。経営状況を数字化ことは、極めて重要です。

そこで、世の中の経営者は「経営に使える財務会計法が必要だ」と考えました。その結果、管理会計が生まれました。

逆に言うと、経営に使える数字で経営状況を評価するためには、管理会計が必要と言えます。そこで、私がお勧めさせて頂く管理会計が「戦略MQ会計」です。

この「戦略MQ会計」については、こちらをお読み下さい「『戦略MQ会計』とは」。

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