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2020.01.24

イノベーションを促進する第五の法則

イノベーションを促進する第五の法則

経営学者であるドラッガーは、

企業の目的が顧客の創造であることから、企業には2つの基本的な機能が存在することになる。すなわち、マーケティングとイノベーションである

と説き、同時に「イノベーションの7つの機会」を提案しています。

今回、このドラッガーの提案とは別に、イノベーションを促進する考え方として、田坂広志氏の「未来を予見する5つの法則」について紹介し、各法則について詳しく説明しています。

本ブログでは、第五の法則について説明します。なお、繰り返しとなりますが「未来を予見する5つの法則」は以下です。

第一の法則:「螺旋的プロセス」による発展の法則
第二の法則:「否定の否定」による発展の法則
第三の法則:「量から質への転化」による発展の法則
第四の法則:「対立物の相互浸透」による発展の法則
第五の法則:「矛盾の止揚」による発展の法則


第五の法則「矛盾の止揚」による発展の法則

「矛盾」とは、世界の発展の原動力である。

これまで4回に渡って、「未来を予見する5つの法則」について説明してきました。しかし、これらの法則には、その根底に存在する最も基本となる法則があるのです。

それが、第五の法則「矛盾の止揚」による発展の法則です。

世の中の物事が、変化し、発展し、進化していくのは、その物事の中に「矛盾」があるからです。極論的には、マネジメントの本質は「矛盾のマネジメント」である、と田坂氏は言います。

一番分かりやすい例は、企業の経営における「利益の追求」と「社会貢献」の矛盾です。これは「イノベーションを促進する第四の法則」でも説明しましたが、近年では営利企業でも「社会的責任」や「社会貢献」が求められるようになっています。

すなわち、企業であるかぎり、日々「利益」を上げていかなければいけません。「利益」を上げなければ、社員に給料を払うことも、企業として存続していくこともできません。

しかし、一方で、利益に結び付かないような「社会的責任」についても営利企業として役割を果たしていく必要があります。

田坂氏は、この「矛盾」に対し、機械的に「割り切って」しまうと生命力が失われてしまう、と説き、「利益追求」と「社会貢献」の矛盾を止揚する。このことが営利企業の事業発展に必要であると唱えます。

当然、第四の法則のように、非営利である社会起業家であっても、「社会的責任」を果たしつつも「利益」も追わなければいけない。また、「営利」であっても「非営利」であっても、この「利益追求」と「社会貢献」の矛盾を止揚しなければならないのです。

この「止揚」とは、止めて、揚げること。すなわち、対立し合う二物の関係を1つ上の次元へと引き揚げるということです。

ドイツ哲学用語では、「正・反・合」を表現する「テーゼ・アンチテーゼ・ジンテーゼ」で表されます。


では、この「止揚」は如何にして行っていくのでしょうか。これを行うためには、「対話」を行う必要がある、と田坂氏は言います。

すなわち、単に意見を戦わせる「討論」でもなく、単に意見を交換する「議論」でもなく、お互いの思考を深めていくという意味で、極めて創造的な「対話」が必要なのです。

ご自身との対話や、社員との対話を通じて、矛盾をはらむ難しい課題に対して、止揚により解決策を引き出して行ってください。

対話方法

この「矛盾を止揚する」対話方法にも、様々な種類があります。

例えば、一人で自分自身と対話する「瞑想」。近年は「マインドフルネス」という瞑想の一種が広がっています。

そして、二人で行う「コーチング」。近年、注目されているのは、上司と部下の間で行うコーチング手法の一つとして「1 on 1」があります。

さらに、複数人で行う「打合せ」。これは、情報の共有や伝達だけの「会議」とは異なり、本音で「対話」できる環境作りが大切です。

1 on 1

この「1 on 1」とは「1 on 1ミーティング」とも呼ばれ、既に米国シリコンバレーでは文化として根付いており、人材育成の手法として世界的に注目を集めています。

日本では、ヤフーが導入して効果が認められたことから、国内でも広がりを見せています。

この「1 on 1」は、従来の人事評価等で行われていた「面談」とは全く異なります。

すなわち、「面談」とは「部下を評価するための上司の時間」という位置づけですが、「1 on 1」は「部下の成長のための部下ための時間」という位置づけです。

皆さんは「部下のための部下の時間」というものを意識したことはありますか?

もし、そのようなことを意識したことがなければ、是非、「1 on 1」を知って頂ければと思います。詳細説明は「1 on 1の基本的なやり方と考え方」をお読みください。

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