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2020.01.14

イノベーションを促進する第二の法則

イノベーションを促進する第二の法則

経営学者であるドラッガーは、

企業の目的が顧客の創造であることから、企業には2つの基本的な機能が存在することになる。すなわち、マーケティングとイノベーションである

と説き、同時に「イノベーションの7つの機会」を提案しています。

今回、このドラッガーの提案とは別に、イノベーションを促進する考え方として、田坂広志氏の「未来を予見する5つの法則」について紹介しています。

そして、各法則について詳しく説明しています。本ブログでは、第二の法則について説明します。

なお、繰り返しとなりますが「未来を予見する5つの法則」は以下です。

第一の法則:「螺旋的プロセス」による発展の法則
第二の法則:「否定の否定」による発展の法則
第三の法則:「量から質への転化」による発展の法則
第四の法則:「対立物の相互浸透」による発展の法則
第五の法則:「矛盾の止揚」による発展の法則

第二の法則:「否定の否定」による発展の法則

現在の「動き」は必ず、将来「反転」する。

第一の法則で説明したように、世の中の物事は「螺旋的プロセス」による発展を遂げていきます。これは「機能」の視点から見たものです。

一方で、「動き」の視点から見てみた場合、世の中の変化の「トレンド」を考えるならば、必ずどこかで、その「トレンド」が反対方向への「リバウンド」を起こします。

これが「否定の否定」による発展の法則です。
すなわち、現在の「動き」は必ず、将来「反転」します。

ここで述べる「否定」とは、「機械的否定」ではなく、決して「消す」や「壊す」といった意味でもなく、その段階を「超える」「超越する」といった意味です。

例えとして、陰陽道の有名な言葉が挙げられます。

陽、極まれば、陰。
陰、極まれば、陽。

「否定」の「否定」

田坂氏は「オンライン・トレーディング」を例に挙げて詳しく説明しています。

従来の「対面」のビジネスモデルは、単に株売買の「取引サービス」を提供するだけではありません。顧客に対しての市場の最新の動向を伝え、株の売買についてのアドバイスをするという「情報サービス」も行っていました。

そのため、業務コストが高く、売買手数料も高い状態でした。

このような理由から「オンライン・トレーディング」のサービスを掲げたネット証券会社は、「対面での情報サービス」をやめました。
そして「取引サービス」に絞ることで業務コストを安くすることができ、その結果、買手数料も安くすることができたのです。

これはある意味、ネット証券会社が、従来の証券会社が提供してきた「対面での情報サービス」の競争を否定したと言えます。

そして、「低価格の取引サービス」の競争に徹したことによって、オンライン・トレードは急成長しました。

これが第一の「否定」となります。

そして、数多くのネット証券会社が生まれ「価格競争」が激化し、「価格破壊」が起こりました。そして、その状況で生まれたのが、まさに「リバウンド」でした。

すなわち、オンライン・トレードでは、低価格の取引サービスを競い合う「価格競争」から、高度な情報・知識サービスを競い合う「付加価値競争」へと主戦場を移し始めました。

オンライン・トレーディングの「合理化・効率化」が極限にまで進み、コスト削減による「価格競争」も極限にまで進んだ段階で「反転」が起こりました。つまり、「リバウンド」が起こったのです。

これが第二の「否定」となります。

かつて「情報サービスの競争」を否定する形で始まった「価格競争」が、今度はその「価格競争」を否定する形で「情報サービスの競争」に向かうという「反転」が起こったのです。

これが「否定の否定」による発展の法則になります。

「反転」と「リバウンド」

もう一つ、この「反転」と「リバウンド」の例として挙げているのが「知識社会」です。

「知識社会」とは「知識が価値を持つ社会」ではなく、「知識が価値を失っていく社会」でもあります。

なぜなら、「知識社会」も深く見つめれば、螺旋的に発展していくからです。

これからの時代は「言葉で表せる知識」そのものは、だれでも手間と時間と費用をかけず、容易に入手することができるようになっていきます。

そのため、専門知識や最新知識などの「言葉で表せる知識」は、相対的な価値を失っていくことになります。

それが「知識が価値を失ていく社会」という意味です。

これからは「言葉で表せない智恵」や「非認知能力」が価値を持つようになります。
例えば、スキルやセンス、テクニックやノウハウといった「言葉で表せない智恵」が、これからの知識社会において、大きな価値を持つようになると、田坂氏は予見しています。

まとめ

今回、「未来を予見する5つの法則」の第二の法則「否定の否定」について説明しました。

あなたの業界では、過去に否定された商品・サービスは何がありますか?
その商品・サービスを否定した新しいものを否定するとすれば、どうのように否定しますか?

一度、考えてみてください。新しいイノベーションの種を発見することができるかもしれません。

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